かとうぎ桜子区政レポート 2023年9月号 議会報告通号157号 【1ページ目】 6月から、ZOOMを活用して「雑談の会」を始めました。 メインで話をしてくれるのは、かとうぎ桜子の友人で言語聴覚士をしている、ぬまさん。 ぬまさんは普段、病院でリハビリを必要とされる人の支援をしていますが、 より多くの人が気軽に、普段抱えているもやもやをお話しできるような場が 作れたらいいのにという思いを持っていらっしゃる、と聞いて、一緒に企画をし始めました。 【活動の趣旨】 誰かと他愛もない話をすることで、問題自体の解決はしていないのにスッキリした!  そんな体験を、多くの方と共有したい。そんな場を提供できればと、雑談会を開催してみることにしました。 体、心、仕事、友だち、家族、パートナー、子育てなどの悩み… ふだんのくらしの中で、モヤモヤは誰しもお持ちかと思います。 雑談会では悩みを相談するのも良し、まだ悩みにもなっていないモヤモヤを吐き出すのも良し。 「誰にも共感してもらえないかもしれない」と思っていることでも、誰かに聞いてほしいと思ったら参加してみてください。 「話すことが上手じゃない」と心配しなくて大丈夫です!コミュニケーションの リハビリ担当、言語聴覚士があなたのお話にゆっくり耳を傾けますよ。 今後、定期的に実施できればと思います。 【2,3ページ目】 障害のある人がそれぞれに合う暮らし方をするために かとうぎ桜子は2018年から、議員の活動とは別に大泉学園町を拠点にして福祉的な活動をする団体の運営をしています。 高齢の人や障害のある人など生活に少しサポートがあると良いなという人のためのシェアハウスからスタートし、 アパート探しのお手伝いをする居住支援事業なども行ってきましたが、7月、障害のある人のグループホームを開設しました。 立ち上げたばかりで私も夜勤などをやっており、そのために駅で区政レポートを配る頻度が前より 少なくなってしまっているのですが、現場で学んだことを政策に活かしていきたいと思います。 そもそも障害のある人のグループホームってどんなものか? 身近に感じる機会が少ないかもしれません。 グループホームは、入所施設よりも家に近い環境で暮らす場です。高齢者のグループホームを 思い浮かべる方も多いと思います。高齢者のグループホームは介護保険に位置付けられており、 認知症があってかつ身の回りのことはある程度自分でできる人が対象です。 障害のある人のグループホームは、障害者総合支援法に位置付けられています。 今回のレポートでは障害者のグループホームのことをご紹介します。 より多様な受け皿が必要 障害者総合支援法に基づくグループホームは、単身の生活に不安がある障害のある人や 介護が必要な人が地域で暮らす場として位置付けられています。 6月に議会で取り上げた段階で区内には710室のグループホームがあります。 左に載せた資料は少し前に議会の議論をするにあたって入手したもので少し情報が古いのですが、 2021年12月現在では639室、その中で区民の利用は342名だそう。 区民の利用は約半数ですが、一方で表にあるように、区外のグループホームを 利用している人もたくさんいらっしゃる状況もあり、 練馬区はこれからもグループホームを増やしていく方針を持っています。  障害者グループホームには以下の類型があります。 ・介護サービス包括型  グループホームの職員が支援を提供。日中は作業所やデイケア、一般就労など就労・活動の場に 出かけることが想定された人員配置になっている。 ・日中サービス支援型  職員が24時間いて、日中通所が難しい、障害の重い人も暮らせるように支援するタイプ。 ・外部サービス利用型  支援は外部のヘルパー事業所が行う。 というようなサービス内容が想定されています。 しかし、3類型あっても、多くの場合は介護サービス包括型で、 2023年6月現在の練馬区内のグループホームのうち 外部サービス利用型は2事業所、日中サービス支援型は0です。 ちなみに私が運営するグループホームも介護サービス包括型です。 せっかく様々な障害の状態を想定した類型があるのに、 2類型は実際にはほとんどないというのでは、その人の心身の状態や環境に応じた 選択肢が狭まってしまうのではないでしょうか。 例えば長く実家で引きこもり状態にあった人が実は障害があったと判明し、 親元を離れて暮らす場を整えようとした時に、いきなり日中どこかに出かけることを 前提とした介護サービス包括型のグループホームに入ることは困難かもしれません。 同様に、精神科の長期入院から退院したばかりで日中活動をすることには困難を 感じている人の地域の受け皿や、強度行動障害などきめ細かなケアが必要な人の 住まいの選択肢という意味でも、24時間のサポートがあるタイプのグループホームは必要なはずです。 また、全国的な利用者の状況を見ると、必要な時に外部のヘルパーのサポートが使える 外部サービス利用型は精神障害のある人が多く活用していますので、 これもまた、一つの選択肢として充実させることも必要なのではないかと思います。 議会では、特に区内0である日中サービス支援型のグループホームは増やす必要が あるのではないかと指摘しました。 それに対して、区は、 「障害者が地域の中で生活を楽しみ日々生きがいを持って暮らすためには、 グループホーム内だけで生活を完結せずに障害特性に応じた活動の場を充実することが重要です。 区は、日中サービス支援型のグループホームではなく、グループホームから通所できる福祉園や 福祉作業所等、日中活動の場を充実しています。」と回答しています。 たしかに、障害の有無に関係なく、毎日の生活が家の中だけで完結するのでは楽しくないかもしれません。 外に出かけてやりがいのある活動を見つけ、仲間を作ることができるのは理想だと思います。 しかし、先に書いたような様々な障害の状態にある人は、少なくとも当面数カ月は、 日中活動をする場を見つけるよりもまずは地域の自立生活を確立させることが必要だということもあります。 そういう段階の人のための選択肢がなければ、そのような状態にある人は遠方の入所施設や病院で 暮らすしかなくなってしまいます。障害の重い状態の人が地域生活に踏み出す最初を支える仕組みづくりは 必要なのではないでしょうか。 重度の障害のある人の受入をするためには、福祉施設としてエレベーターや駐車場の設置などが 必要というバリアフリーの規制もあり、練馬区のような都心の小規模な土地建物では実施しづらいという課題もあります。 質の高い支援を提供するためのしくみも必要 グループホームは、利用者が安心して楽しく暮らすことができる支援の場として、 虐待などの権利侵害が起こらないようにするため、地域に開かれた場所にする必要があります。 国の指定基準では、「住宅地と同程度に利用者の家族や地域住民との交流の機会が確保できる立地」 などの要件が定められています。 しかし、障害者のグループホームの情報公開のしくみは不十分です。例えば認知症対応型グループホーム の場合は、利用者・家族・区市町村職員・地域住民の代表者等から成る運営推進会議が義務化されていますが、 障害者制度のグループホームはそのような義務はありません。 インターネットには、「グループホームを運営して儲けよう」という広告が出てきます。 国からの給付費と利用者負担で成り立つ福祉制度は、定員いっぱいになればそれ以上に収入は増えません。 収入は頭打ちになる構造の中で「儲ける」ためには、支出を減らす―つまり人件費を抑えなければならなくなります。 その結果、福祉の仕事の経験のない人が学ぶ機会も保障されないまま、 ワンオペで対応していたのでは、障害のある人の今の幸せと将来を見据えた支援を十分に提供できるとは思えません。  地域に開かれた体制を義務化するなど、質の高い支援のためのしくみづくりが必要です。 【4ページ目】 指定管理者制度の課題 公共施設は今「指定管理者制度」のもと運営されることが多くなっています。 指定管理者制度は、民間法人も公共施設の管理運営に参入できる制度として小泉政権時の 2003年にスタートしました。練馬区でも2003年度から導入しており、現在190施設が指定管理者の 運営となっています。福祉施設についても例外ではないのですが、制度導入から20年がたち、 この運営体制を継続するのか、変えるのか…という課題があります。そんな中、 ひとつの事業者が指定管理者を受けるようになってから一定期間、安定して質の高いサービスの 提供ができると判断できた場合、民営化を検討することも出てきました。 区立の障害者グループホームであるしらゆり荘は練馬駅の近くに立地し、 グループホーム(男性4名 女性4名)のほか、短期入所、日中一時支援事業を実施していました。 長く同じ法人が運営を担ってくださっていたこともあり、今年度の指定期間の満了にあたって、 民営化を想定した新たな運営方法の決定をするはずだったのですが、ここへきてその法人が撤退すること になってしまいました。 そのため、来春からの運営事業者を急いで選定しなくてはならず、民営化もいったん保留となります。  今までにもこのように、運営法人側の事情での撤退が起こったことはあります。民間に担って いただく以上、区にとって好都合にばかり進まない、民間法人にはその法人の事情があるわけで それを引き留めることはできません。 公的施設の運営を民間に振っていくことの難しさが改めて浮き彫りになりました。 【かとうぎ桜子プロフィール】 1980年生まれ。現在、43歳です。27歳から区議会議員になって、5期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、介護保険など制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。