かとうぎ桜子区政レポート 2023年7月号 議会報告通号156号 【1ページ目】 6月の区議会定例会は、区議会議員選挙後に行われた最初の定例会でした。 この時期は毎年度、正副議長や各議員の所属する委員会を新しく決めるのですが、 私は今年度は保健福祉委員会と医療・高齢者等特別委員会に所属することになりました。 必ずしも福祉の委員会に所属できるときばかりではないので、良かったです。 特に来年度の制度改定に向け、今年度の後半は介護保険や障害者制度をはじめとする 様々な議論をすることになるかと思います。 15日の本会議では一般質問をしました。 一般質問は練馬区議会のルールでは、正副議長と監査委員を除く46名の議員が 年に1度ずつ順番に質問をします。 私は今回、 ・高齢者福祉、介護について コロナ禍をふまえた対応、ショートステイ、 小規模多機能型居宅介護、小規模な通所事業所のこと、紙おむつの支給、配食サービス ・障害者福祉 障害のある人にも配食サービスが必要であること、 グループホームのこと ・こども施策  学校給食費の無償化、こどもの権利条例、 ヤングケアラー支援 ・選挙制度  前回の区政レポートでもご紹介した、郵便投票制度や 指定施設投票のことなど ・特例貸付 コロナ禍で行われた特例貸付を返済できない人への支援 等について質問しました。詳細はブログに書いているほか、区政レポートでも順にご紹介していきます。 【2,3ページ目】 区政の姿勢次第で改善できることはもっとある 福祉制度でも他のことでも、国の制度として決まっていて、自治体では改善が難しいこともありますが、 もちろん、区の考え方次第で改善できることもたくさんあります。 今回の区政レポートでは、一般質問で取り上げた内容のうち、 「区政が変われば対応可能なはずなのに」という課題をご紹介します。 こうした課題を解決するためには、区民の生活の視点に立つことのできる 区長を誕生させる必要があります。 @介護が必要な人の紙おむつの支給 (かとうぎ桜子の指摘) コロナの影響を受けた2021年度予算の緊急対応で、 介護を必要とする高齢者の紙おむつ支給の限度額8千円を5千円に引き下げて、 対象者の見直しもしました。限度額が引き下げられたことで、おむつにかかる 自己負担額が大きく増えています。 さらに時期を同じくして物価上昇の影響も受け、「紙おむつの家計に与える打撃が大きい」 という声を多くいただいています。(図表@を参照) 区は以前の議会で、「高齢者紙おむつ支給については、制度の持続可能性を維持するために 国が基準を改めた」と説明していますが、これは介護保険の任意事業(図表Aを参照) における介護用品の支給の事業についてなので、介護保険を使わず区として主体的に 高齢者福祉としての実施は可能と考えます。 介護を必要とする人の家族の声に耳を傾けた、自治体としての主体的な判断をするべきで、 2021年度の削減の前の状態に戻すべきです。また国に対して当事者の声を伝え、 制度の是正を求めるべき。 (区からの回答)  高齢化が急速に進行する中で、制度の持続可能性を確保することが必要。 介護保険制度の枠組みの中で財源を確保しながら運営していく。 見直しにあたっては、既存の利用者で所得制限超過により対象外になる方には 区独自に経過措置を設けて影響を最小限に。利用できる紙おむつの枚数も影響が生じないよう、 低価格の商品を導入するといった工夫を図っており、 見直し前に戻すことや国への要望をする考えはない。 結局のところ、区民の生活実態がどうかよりも、国が決めたことに従うことしかしないというのが 今の区政の姿勢と感じます。 A高齢者や障害者の配食サービス (かとうぎ桜子の指摘) バランスの良い食事をとることは、心身の状態や生活を安定させるために重要。 さらに、すべての人にとって必要な「食」への支援をきっかけとして、 今まで福祉的支援につながっていなかった人の日々の見守りを行い、 そこからヘルパーやデイサービスなどその人にとって必要な支援につなぐことも 配食サービスの大きな役割です。 生活に困窮していたり、今までの食習慣から、食に対して費用をかけられないと 感じる人も多いので、最低限の食を保障することは重要です。 練馬区は見守りを含む配食サービスを週3食まで配食サービス事業者に 委託する形で実施していましたが、紙おむつの見直しと同じ2021年度に 委託を廃止、事業者を区民に紹介するだけの事業者登録制に変えました。 「区が委託をしなくても配食事業者は増えてきた」としています。 もちろん配食事業者はたくさんありますが、金額は決して安くはありません。 600円、700円などの金額になることが多いのです。支援が必要な人ほど利用を控える おそれもあるからこそ、委託による支援が必要です。 ホームページで調べると、23区では12区、行政が一定額を支援する形での 配食サービスを行っています。改めて、委託に戻すべきです。 また、ひとり暮らしの障害のある人の中にはバランスの良い食生活を 取りづらい人もいるので、障害のある人への配食サービスも支援すべき。 (区からの回答) 制度を見直す中で、緊急通報システムと組み合わせて利用することで弁当事業者が直接、 警備員のかけつけサービスを要請できるように。 見直し前は週3回までだった配食の利用回数の上限もなくなった。 委託事業に戻す考えはない。障害のある人の配食も選択肢はたくさんある。 配食サービスはあえて見守り、という形ではないからこそ、初めて支援を受ける人にとって ハードルが下がるということを見逃してはならないと思います。 -------- 図表@ 練馬区の紙おむつ給付事業の対象となる製品の今年度の 価格改定の例。他の製品も同様に値上げがされていて、 1割以上の値上げとなるものも。 2023年3月まで 2023年4月から あるリハビリパンツ 1738円 1914円 ある尿取りパッド 638円  979円 介護保険の任意事業とは(「ねりまの介護保険」より) 任意事業は、高齢者が住み慣れた地域で安心してその人らしい生活を継続して いくことができるようにするため、地域の実情に応じた必要な支援を行うことを 目的とする事業である。 「@ 介護給付等費用適正化事業」、「A 家族介護支援事業」、 「B その他の事業」の3種類に区分される。 図表A 厚生労働省・行政事業レビュー 平成30(2018)年度 の資料より 介護給付(要介護1〜5) 予防給付(要支援1〜2) 地域支援事業 介護予防・日常生活支援総合事業 (要支援1〜2、それ以外の者) 介護予防・生活支援サービス事業 訪問型サービス 通所型サービス 生活支援サービス(配食等) 介護予防支援事業(ケアマネジメント) 一般介護予防事業 包括的支援事業 地域包括支援センターの運営(左記に加え、地域ケア会議の充実) 在宅医療・介護連携推進事業 認知症総合支援事業(認知症初期集中事業、認知症地域支援・ケア向上事業等) 生活支援体制整備事業(コーディネーターの配置、協議体の設置等) 任意事業 介護給付費適正化事業 家族介護支援事業 その他の事業 --------------- B学校給食費無償化とこどもの権利条例 練馬区は今年度、第2子以降の学校給食費無償化を実施しました。 2月の区議会定例会の時に区長は 「子どもの食費は保護者が負担する、それは当たり前のこと。 負担が困難な世帯には十分な支援が行われている。 それ以上の補助を行う場合、政策的な理由や考え方がなければ 単なるばらまきに堕してしまうおそれがある。少子化が想定より進行している 国家的な難局で、多子世帯の経済的負担軽減を実施することは 政策的に有意義である。」としています。 私はこの考え方に、いくつかの点から疑問を持っています。 まず、こどもに対し第一義的に責任を持つのは親であるとしても、 どんな家庭環境にあるこどもも安心して自分らしく育つことができるよう支援し、 その権利を保障する責務は社会にあります。 義務教育は無償とされていながら、給食費や教材費など、様々な負担があります。 給食費の無償化は、すべてのこどもが安心して義務教育を受ける権利を保障するために 実施すべきです。また、無償化を行う理由は、少子化対策ではなく、 こどもの権利保障であるべき。すべてのこどもに対する学校給食費の無償化を進めるべきです。  給食費に限らず、すべてのこども施策を「こどもの権利」という観点から再検証する必要があります。 この春、こども基本法が施行されましたが、すべてのこどもが個人として尊重され、 基本的人権が保障されるとともに、差別的取り扱いを受けることがないようにすること、とされています。練馬区も国の施策を待たず、主体的にこどもの権利保障に取り組むべきで、 こどもの権利条例を策定すべきです。 (区・教育委員会からの回答) 学校給食は教育活動の一環と認識しているが、学校教育に関わる全ての経費が無償となるとは 考えていない。教材費、修学旅行、体操服や中学の標準服などの経費は保護者の負担。 学校給食法では食材料費は保護者の負担と定められている。 第二子以降の学校給食費の無償化は、国の想定よりも少子化が急速に進行する中で、 多子世帯の経済的負担軽減を図るため今年度から開始したもの。 生活困窮世帯には就学援助制度等による援助を行っており、 すべての児童生徒の学校給食費の無償化を進める考えはない。 「こども基本法」は、児童の権利に関する条約の精神に則り、全ての子どもが、 将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指している。 区では、条約の理念を踏まえ、子どもの人権を尊重し子どもの健やかな成長を 保障することを基本として「練馬区教育・子育て大綱」や「第二期練馬区子ども・ 子育て支援事業計画」を策定しており、これらに基づく施策を着実に実施することを通して、 子どもの権利擁護を図っている。区条例を制定する考えはない。 こどもに関する施策は、こども自身の権利保障だけではなく、子育て支援や少子化対策が ごちゃまぜになりがち。でも、こどもの権利保障と親への支援はそれぞれ独立して考えるべきだし、 そこを充実させることで結果的に少子化対策につながるのではないでしょうか。 【4ページ目】 超党派議員の演説会 5月中旬、昨年の区長選に挑戦してくださった吉田健一さんと、 超党派の議員(立憲民主1名、共産党3名、生活者ネット1名、 無所属2名)合計7名で駅頭演説会をおこないました。それぞれの 議員が、選挙を経てこれから区政に取り組む思いを話しました。 こうした報告の機会をこれからも持っていけたらと思います。 桜井すぐるさんとの講演会 5月20日、埼玉県北本市議会議員の桜井すぐるさんと講演会を行い ました。 桜井さんはかとうぎ桜子が5期目に当選したのと同じ4月下旬の統一 地方選挙で2期目に当選されました。埼玉県庁で長く働いていらした のですが、ご自身のお子さんの学童クラブに保護者としてかかわった 経験や、様々な社会的課題の現場を見たりボランティアに参加する経験 から、住民と少し離れた立ち位置にある埼玉県庁でこのまま働き続ける より、もっと地域と密につながることのできる仕事をしたいという 思いで議員を目指したという話をお聞きしました。 このように、生活の中の課題の解決を実現したいという思いで新たに 議員を目指す仲間が増えると良いなと思います。 また、1期目の活動の間には、こどもの権利条例の策定に中心的に取り組んだというお話も 伺いました。 特に、学校でいじめや体罰などの問題が起こったときに、学校や教育委員会ではなく、 第三者機関に相談できる体制をとったことは意義があると考えているということや、 この条例をもとにこれから計画を作ったり、 こども自身の意見を聞く場を充実させていく予定であるといったお話でした。 その他、住まい政策についても話しました。桜井さんとのお話の様子は近日中に アーカイブ動画を配信したいと思いますので、準備ができましたらまたご報告します。 かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、43歳です。27歳から区議会議員になって、5期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、 今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、 人間関係を調整する仕事に関心を持ち、大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の 資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、 介護保険など制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、 2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって 施策が進められていることに疑問を感じ、立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、 民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。