かとうぎ桜子区政レポート 2023年2月号 議会報告通号152号 (1ページ目) 2月6日から3月10日までの予定で区議会定例会が行われています。今回の定例会では、2023年度予算、2022年度補正予算の審査がメイン。 練馬区が2023年度予算で掲げているものを上にいくつかご紹介しました。このようなイベント的なものを独自のとりくみとしてメインに掲げることには違和感を覚えます。長期化したコロナ禍と、物価上昇で生活に影響を受ける区民も多い中、まず区として示すべきものは、練馬区としてどう区民の生活を支えるかという主体的な姿勢なのではないかと思うのです。でも、区民の生活よりも、練馬区が外から見てどう見えるかがメインになってしまっているようです。 記者発表資料では、「福祉や子どもに関する予算は全体の約7割《とあるのですが、その中には生活保護や介護保険など国の制度として実施しなければならないものも含まれており、区が独自に実施しているものばかりではないのです。独自支援の工夫が必要です。 例えばこども食堂やフードバンクなどの支援をしている民間団体に対する支援を進めることや、区として食糧などの配布のイベントなど機会を作って、そこであわせて相談会を開くなど、お困りになっているけれど相談に行くことにためらいのある区民の皆さんが一歩を踏み出しやすい、相談しやすい環境づくりなどが必要ではないかと考えます。 また、前回と今回の区政レポートでもご紹介したように、国の生活支援は、当事者の生活実態を理解した上での施策なのか疑問に感じるところも多いですので、このように穴になっているところに区として力を入れるべきではないでしょうか。 【2023年度予算の記者発表資料で大きく掲げている内容】 〇大泉に牧野記念庭園のある牧野富太郎さんが4月からNHKの朝の連続テレビドラマの主人公になるので、その関連のイベント等 2300万円 〇夏にとしまえんの跡にハリーポッターの施設ができるので、その関連のイベント等 5100万円 〇都市農業フェスティバルの開催1億6800万円 〇美術館の基本設計、実施設計 1億4800万円 〇以上のようなイベントがあるためのそれを「ねりま推し《としてPRする広報費2300万円 (2,3ページ目) 妊娠・出産・子育てまで一貫した支援のしくみの課題 「出産・子育て応援交付金とは《 2月の補正予算で、「出産・子育て応援交付金《について審査しました。この交付金は、2022年12月に成立した国の補正予算で創設されたものです。 厚生労働省の資料によれば、「妊娠期から出産・子育てまで一貫して身近で相談に応じ、様々なニーズに即した必要な支援につなぐ伴走型の相談支援を充実し、経済的支援を一体として実施する事業を支援する交付金《とされています。 【事業の内容】 2022年4月以降に出産した人が対象。 もともと、妊娠届出時と出産後の訪問による面談は行われていたのですが、新たに妊娠8か月頃、1才の誕生日頃にアンケートを実施。経済支援として妊娠期・出産時のギフトがあります。 「練馬区は、区の財政負担軽減のために現金給付を回避《 この事業にかかる費用負担の分担は、国が3分の2、都が6分の1、 区が6分の1となっており、実施方法はクーポンでも現金でも良いとしています。 厚生労働省が2022年12月に市区町村に実施したアンケートでは 970自治体のうち、942が現金給付(キャッシュレスも含む)を考えているといいます。 ところが東京の場合、都がもともと子育て支援で実施していたカタログギフトのシステムを活用すると、本来区が負担すべきだった 6分の1の費用を都が補助してくれるということで、練馬区は現金給付ではなくカタログギフト方式で実施するといいます。 カタログギフトを見ると全般的に割高な価格設定がされており、10万円分がもし現金給付なら同じ商品をもっと安価に購入することができる可能性もあります。 なにより、なぜいつも生活支援の際に現金給付を避けようと「クーポン《という選択肢が示されるのでしょうか。約1年前にも、子育て世帯への給付金にクーポンを導入しようとして批判を浴びたばかりです。今回も国はクーポンのシステムを検討してほしいとしており、それは「出産・子育て目的に限定し、有効期限を設定することでより出産育児関連商品の購入や子育てサービスの利用につながりやすい《からだとしています。まるで、現金を渡したら親は赤ちゃんではなく自分のために使うのではないかといわんばかりの政策の姿勢に疑問を感じます。 出産にも育児にもたくさんの経済的負担がある中、子育て世帯が求める経済支援は、クーポンではなく現金給付なのではないでしょうか。そして、当事者の声をもとに国の制度のあり方を改善していくことが、身近な自治体の役割であり、そこにこそ自治体としての独自性を発揮すべきなのではないでしょうか。でも、区は、6分の1の負担軽減に目を奪われたのでしょうか。 「継続的な支援である分、多様な家庭への配慮と慎重さが求められる《 この事業は、伴走型支援として妊娠期から出産、子育て期へと継続して実施する支援であるため、国も様々な留意点を示しています。 例えばこの時期に転居した場合の自治体の役割分担、DV被害者だった場合、離婚があった場合、死産だった場合の対応などです。 妊娠・出産期に生じる可能性のあるこれらの課題に対し、この事業を通じて支援者が妊産婦に関わりをもつきっかけとなるメリットはありますが、対応を誤らないよう慎重さが求められます。 また、アンケートについては、 国が示す例として、「夫やお母さんに何でも打ち明けることができますか?《といった項目もあったのですが、様々な家庭環境にある妊産婦に対面ではなく書面で実施するアンケートの項目には配慮が必要であるとも考えます。 【前回の区政レポートでご紹介した、国の交付金を活用した区の給付金のその後の状況】 1月号の区政レポートで、「国の交付金を活用した区独自の子育て世帯・こども1人あたり10万円の給付金が、生活保護世帯にとっては控除額が8千円だけで、あとは返金しなければならないしくみになっており、生活保護ではない世帯は課税される可能性がある《という課題をご紹介しました。 【生活保護世帯は返金上要に】 その後、生活保護世帯に関しては国との交渉をした結果、控除額は3万円まで拡大、控除されない分についてもこどものために使うならば「自立更生のためにあてられるものは収入認定を免除する(自立更生免除)《ということで返金上要の扱いに変更になったそうです。 生活保護は、生活保護基準に満たない生活費を保障されるしくみで、年金や就労などの収入を申告してその分は保護費から引かれます。でも、収入の種類によっては控除されたり、認定免除されることがあります。今までの国の給付金は収入認定から免除されていました。 また、災害からの復旧や就学、結婚等にお金が必要で、それにあてるために貸付を受けるなど、その人の生活の自立のために必要であると認定されるものについては「自立更生免除《として収入認定の免除がされることがあり、今回の区の給付金もそのように取り扱うことができるようになったということです。 【生活保護ではない世帯も非課税扱いに】 また、生活保護ではない人にとって課税対象になるかどうかの判断は所轄の税務署の判断であるということで、区が確認をした結果、非課税扱いとなるという回答があったということです。 しかしそもそも本来、国が交付金を活用して各自治体が独自で給付金を支給できるしくみを作った以上、制度設計をする段階でこのような混乱の状態にならないように定めるべきだったのではないでしょうか。 (4ページ目) 暮らしネット・えん 小島美里さんをお呼びした講演会の動画を作りました。       新座にある暮らしネット・えん代表の小島美里さんにご講演いただいた介護制度の勉強会のダイジェスト動画を作りました。市民ふくしフォーラムのyoutubeに載せています。 動画は3本に分かれています。字幕付きなので、音無しでもご覧いただけます。 ぜひご覧ください。 (1)暮らしネット・えんを立ち上げる経緯 とても共感できる話でしたのでぜひ。         https://youtu.be/6K8YsbmbRTQ (2)介護制度の課題についてのご講演 https://youtu.be/8LLIUutyI8U (3)ご参加いただいた方からの質疑 https://youtu.be/7VX0IwZzL1o 市民ふくしフォーラムの会員を募集しています。 会員になってくださった方には、2022年の活動報告など会員特典を送らせていただきます。会費は年間1000円です。 会計年度が1月〜12月ですので、昨年まで会員になっていただいた方も更新の時期となっております。 お申込みいただける方は、ゆうちょ銀行の振込用紙にお吊前、ご住所と、会員またはカンパの別をご記入の上、以下にお振込みください。 市民ふくしフォーラム 00130-2-496362 かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、42歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、介護保険など制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス《を大泉学園町4丁目にオープン ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。