かとうぎ桜子区政レポート 2023年12月号 議会報告通号158号 【1ページ目】 9月、10月の区議会定例会では、2022年度の決算、今年度の補正予算の審査をしました。 今、私は区議会では無所属の岩瀬たけしさん、高口ようこさんと3人で会派を組んでいるので、 3人で役割分担しながら質疑をしました。私は今回、総務費、産業経済費、環境費、 保健福祉費について質問しました。また、今年度の補正予算も本当は質問の担当だったのですが、 インフルエンザにかかってしまい、質問の概要をまとめて高口さんに託して質問していただきました。 【決算でかとうぎが質疑した内容】 〇就職氷河期の時期に採用をおさえたために、現在の区職員は特に30代、40代の人数が少なく、 50代以上が多くなっている。区はこれを解消するために、経験者採用を増やしているとのこと。 就職氷河期世代では働く機会を持てない状態が継続した人も多いことから、 その世代の人材育成の観点での採用も必要であると指摘。 〇2022年に成立した「困難な問題を抱える女性の支援に関する法律」が来春に施行される。 区としての計画を策定し、支援者の処遇改善などを進めるべきであると指摘。 〇男女共同参画センターで実施している総合相談の相談件数が増加している。 ワンストップ支援センターなど相談できるところは増えているが、暴力被害直後の急性期などだけではなく、 じっくり相談できる場はまだまだ多くないので、相談したい人に相談窓口のことをより 一層知っていただく周知が必要。 〇今年の夏の暑さは異常だったが、この数年、夏は外で働くのが危険と感じる日も増えている。 ごみの収集に携わる人の熱中症対策として、水分等の支給の他、1車両が収集する量を減らして 負担軽減を図るなど、安心して働き続けられる環境づくりが必要。 〇太陽光発電の設置補助を利用する人は、原発事故直後は年間400件ほどだったが、 売電の買取価格の引き下げに比例して件数が減少し 100件前後となっている。蓄電池を活用することを周知するなど、太陽光の設置を検討する 区民が設置のメリットを感じながら環境問題に取り組めるような工夫が必要と指摘。 〇ウクライナ問題の影響で化学肥料が高騰した際、練馬区は上昇分の補助を行ったが、 有機肥料への転換の支援も充実させることが必要。 〇「精神障害にも地域包括ケア」への対応の充実が必要。(詳細は中ページをご覧ください。) 〇障害のある人が通所する生活介護事業について、新しいタイプのものを作る工夫が必要。 【補正予算で質問した内容】 〇学校給食費はほとんどの区が第1子からの無償化の実施を決めているのに、 練馬区は第2子から。こどもの権利保障のために第1子からの実施をすべき。 〇公共施設にもっと大人用のおむつ交換台の設置を進めるべき。 【2、3ページ目】 精神科の長期入院をなくして、地域で安心して暮らす体制づくりを 精神障害にも地域包括ケアを 今までの区政レポートでもご紹介してきましたが、国では、「精神障害にも地域包括ケアを」という検討が進められています。 精神的な不調を抱えたときに、精神科への入院が数年にわたる問題はなかなか解消されません。 「長期入院をなくし、退院して地域での生活に移行していこう」といわれて久しいですが、 かとうぎと同年代の人の中にも5年、10年と精神科に入院した経験がある方は珍しくありません。 介護保険制度では、高齢者の介護が重度化しても医療との連携のもとで住み慣れた地域で暮らせるように しようという「地域包括ケア」が進められています。まだまだ十分な体制とはいえないかもしれませんが、 高齢の人の生活で困りごとが生じたときには地域包括支援センターが相談を受けるという制度的な枠組みはできています。 そこで、国では、精神障害のある人にも地域包括ケアを導入して、地域生活を支えていこうという しくみづくりの検討が数年来行われています。しかし、具体化する段になると、精神科病院内での 体制のことや、行政の相談窓口のことが話題の中心になっています。地域での暮らしにはそれだけではなくて、 住まいや日常生活の支援、働いたりリハビリをするなど日中出かけて活動できる場の充実、 行政が開いていない時間に困った時にも対応できるような相談・支援の体制の充実など、 民間のとりくみも含めた社会資源の充実が不可欠です。しかし、議論はそこまで至っていないように 思いますので、これからも提案を続けていきたいと考えています。 医療保護入院に関する制度改正が行なわれました 精神障害にも地域包括ケアを、という議論の結果、2022年に改正された精神保健福祉法では、 医療保護入院についての取り扱いの変更が示されています。 医療保護入院は、精神的な不調によってご自身が治療をすべきかどうかを十分に判断できない 状態になった場合に、本人の同意を得なくても、家族等の同意によって入院させられるという しくみです。体調不良でこのような対応をする必要がある人もいるかもしれませんが、 しかし本人の同意を得ない形での対応は極力避けられたほうが良いと思います。 そのためには、重篤化する前に支援につながるしくみづくりなどが必要です。 東京都が公表している2021年度の医療保護入院の数字によると、練馬区だけでも 1141名もの方が医療保護入院をしています。しかもこの数は東京都が把握している数なので、 東京都以外の病院に入院している場合の数は含まれていません。実際にはもっと多くの方が 医療保護入院していると考えられます。このような数字を見ても、精神的な不調を抱えたときに 早期に治療と支援につながるしくみが求められます。 今回の法改正の内容はひとつには、DVの加害者は家族であっても医療保護入院の同意ができる人の 対象から外すことが明文化されたということがあります。 また、身寄りがないなど同意できる家族が見つからない場合には、その人が住む自治体の長が 同意をするという「市区町村長同意」のしくみがあります。練馬区では2021年度77件、 2022年度81件の区長同意による医療保護入院があったそう。 また、家族がDV加害者であるため同意を求めず、区長同意での入院をした人は今年度(9月の段階まで)は3件。 この区長同意の範囲をさらに広げるという法改正もなされました。家族がいても、 そのご家族が入院の可否の判断をすることが難しい事情(DV以外でも)があった場合には、 市区町村長同意で対応が可能とするというものです。 区長同意により医療保護入院した患者さんへの訪問支援が始まる そして、特に市区町村長同意で入院した人は、お見舞いできるご家族などの身内がいらっしゃらない場合も 多いと考えられるため、外部とのつながりが薄くなり、退院後の生活の展望が描きづらくなってしまう という課題があります。 そこで今回の制度改正では、市区町村長同意による医療保護入院をした人のうち、ご本人の同意があった 場合には、訪問支援員による訪問をすることも位置付けられました。ただ、具体的にどんな実務経験や 研修を経た人が訪問支援員になるのか、その支援員の身分は行政職員なのか民間事業所所属なのか あるいはボランティア的な位置づけなのか、人材育成はどのように進めるかなど具体的な体制の 整備はまだまだこれからです。この体制の整備は、東京都だけではなく、特別区も実施主体となることから、 今後練馬区でも早急な体制づくりを求めていきたいと考えています。 精神科病院や行政の体制だけではなく、住まいの支援や日中の活動支援などが地域生活の支援に欠かせない また、先にも述べたように、このような入院中の支援体制の充実も必要である一方で、それだけでは 地域移行にはつながりません。地域で精神障害のある人の受け皿を作る必要があるからです。 前回の区政レポートでは障害のある人のグループホームのことを紹介しましたが、 現状のグループホームの制度では職員の人員配置が十分ではなく、グループホームの利用者は 日中は作業所やデイケアなどに外出することが前提になっています。利用者が出かけている間は 職員は配置しないようにしなければ赤字になってしまう構造になっているのです。 しかし、例えば10年入院生活を送っていた人が退院して新しい生活に慣れるだけでも大変なのに、 それに加えていきなり日中外出することは困難でしょう。少なくとも半年や1年、 新生活に慣れる時間が必要なのではないでしょうか。 そうすると、入居の条件として日中活動を求められるグループホームには入居できません。 このような状況に対応できるようなグループホームの制度設計、 またアパートを借りてひとり暮らしで生活をする場合にその人のケアを大家さん任せにしない、 地域で支えるしくみづくりが急務です。 来年度は障害福祉制度の改定、練馬区の障害福祉計画の改定時期でもありますので、 真の意味での地域包括ケアの実現のための提案を続けていきたいと思います。 【4ページ目】 区政報告会を行いました。 11月19日(日)に、かとうぎ桜子事務所にて区政報告会を行いました。 事務所がいっぱいになる参加をいただき、皆さんと意見交換をしました。 今回は、昨年の区長選に初挑戦した吉田健一さんもご参加くださったので、 ご参加の皆さんからも、今の区政の課題が活発に出されました。 現在、中村橋駅近くのサンライフ練馬を取り壊して、美術館・図書館を一体化させる 大規模改築の計画が動いていますが、サンライフ練馬を利用している人もたくさんいるし、 まだ築40年程度の建物を壊してしまう必要があるのか、また長引く物価高の中、建築費も 高騰しています。昨年の試算で81億円といっていた建物の除却・改築費用はこの金額で 収まるとは思えません。そもそも文化芸術振興はハコが新しくなれば良いというものでもないでしょう。 ご参加の方からは、「美術館の前の公園に動物の置物ができて芝生が敷かれてから、 たくさんのこどもたちが利用しているのに、それもなくなってしまうのか。」 「都心にも美術館があってそこに行くこともできる立地なのだから同じようなものを 作ってもしかたなく、練馬にあるからこその区民に親しめるものにする必要がある」 「以前は高齢の友人たちと連れ立って美術館に出かけていたが、前川区政になって館長を 外部から入れるなどする中で雰囲気が変わり、利用しづらく感じている」といった意見が出ていました。 この春の区議会議員選挙を経て、区議会のメンバーも大きく変わったものの、今の区政に対して 強く改善を求める、あるいは社会をより良い方向に変革しようという議員は残念ながら 増えなかったように感じています。例えば核兵器を廃絶するために、 核兵器禁止条約の批准を国に求めてほしいという区民からの陳情が否決されました。 否決した議員は政権与党の政党に所属する議員だけではなく、野党に所属する議員もなのです。 なぜそのような姿勢で臨むのか。野党の議員に投票をした人は、少なくとも国政における姿勢と 同様の取り組みをすることを求めていたのではないでしょうか。このように、議員として 議会活動をしていて失望することも多いのですが、2年半後の区長選で新しい区長を誕生させて 区民に開かれた区政を作ることを目指し、頑張っていきたいと思います。 【かとうぎ桜子プロフィール】 1980年生まれ。現在、43歳です。27歳から区議会議員になって、5期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、介護保険など制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。