かとうぎ桜子区政レポート 2023年1月号 議会報告通号151号 (1ページ目) 11月、新座にある認定NPO法人暮らしネット・えん代表 小島美里さんを講師に迎えて勉強会をおこないました。 1990年代、介護保険が始まる前の介護サービスは行政が提供する限定的なものでした。 そんな中、重度の障害を持つ人の在宅生活を支える必要があると、小島さんたちは ボランティア活動を始めたそう。しかし、行政のヘルパーが来られない夜間や休日などを ボランティアで支えているのでは継続ができないと、近隣の病院の協力を得て団体を立ち上げたそうです。 そして、支援を要する人からの「こんな支援があったら良いのに」という声に応える形で デイサービスやグループホームなど事業を拡大してきた―当事者の声があるからやってきた、という、 設立に至るまでの話にとても共感をしました。 介護制度の課題としては、 ・現在の介護制度は、予防と看取りが中心で、その間の「介護が必要になっていく時期」の 支援が不十分であり、徐々に介護が必要になる高齢期を安心して過ごせる状況にない ・家事を支援する訪問介護の「生活援助」はあまり使わないようにと言われるなど、 制度上軽視されているのだが、人の生活は身体介護と家事とで切り分けられるわけではない ・介護保険制度ができたときは、多くの高齢者が家族と同居しており、脳卒中など身体的な 介護が必要になることを想定して制度設計されていた。しかし、現在はひとり暮らしの高齢者も 増えているし、認知症で介護を必要とする人が多くなっていることに対応できていない。 認知症で外に出かけたまま家に帰れなくなるなどの症状がある人で要介護認定を受けていない人も多い。 といった課題提起がありました。安心して使える介護制度の実現に向け、 声を上げていく必要があると改めて考えさせられました。 (2,3ページ目) コロナ・物価上昇対策のための国の交付金の課題―12月の補正予算から 12月の練馬区議会定例会で、補正予算の審査をしました。 今回の補正予算は、歳入としては国からの交付金と区の財政調整基金からの繰り入れが中心。 歳出は区の職員などが使う抗原検査キットの購入、コロナのワクチンの職域接種の委託料、 そして国の交付金を活用して区が独自に低所得の子育て家庭への臨時給付金を行うというものでした。 補正予算全体の項目のボリュームとしてはあまり大きくはないものでした。今回の区政レポートでは、 今回の補正予算で区が独自に実施した給付金から見えてくる制度的課題をご紹介します。 コロナ対策に物価高騰対策が加わった交付金を活用し、区独自の給付金を実施 国の制度に「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」という、自治体のコロナ対策の 取り組みに国から交付金を出すしくみがあります。その交付金の枠組みの中に2022年9月、 物価上昇への対応として「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」が創設されました。 その交付金を活用し、今回、練馬区が実施するのは、児童扶養手当を受給している世帯、 または家計急変世帯に対し、こども1人あたり10万円を支給する給付金。 すでに手当を受給している世帯は、新たな手続きをしなくても給付を受けることができます。 この給付金について、私たちの会派では、いくつかの制度的課題があると考えて指摘しました。 課題@単発の給付金が長期的な視点に立った生活支援になるのか? ひとつめは、コロナ禍に加えて物価上昇という、生活に悪影響を与える情勢が長引いている中で、 単発で給付金を支給することが果たして長期的視点から人の暮らしを支える生活困窮者支援と いえるのだろうか? という課題です。 もちろん生活困窮状態にあれば、臨時的に5万円、10万円という収入があれば助かるでしょう。 でも、例えば「毎年〇月には必ず給付がある」といった見通しが立つなら良いですが、 そうではなく、突然実施される給付を繰り返すことで果たして抜本的な問題解決になるでしょうか。 しかし、この交付金は、9月に創設が発表され、なにに活用するかを申請する締め切りが10月末まで でした。そして、今年度中に使わなければならないのです。国が示している推奨メニュー以外の活用も 可能ですが、その場合、計画を提出しなければならないとも書かれています。そうなると、 この短期間で自治体としてできることは実質的に給付金でないと難しいということになります。 このような、場当たり的としか言えない国の支援策の是正を求める必要があります。 課題Aこの給付金は収入認定される この給付金は生活保護世帯も対象になります。 しかし、収入認定されて、その分生活保護費から引かれるので、実質的にはあまり活用できません。 区は、国と控除額の拡大について交渉するということでしたが、補正予算の審査の段階で控除額は8千円でした。 つまり、例えば10万円の給付があっても、その世帯にとっては8千円分しかプラスにならずあとは返還するということです。 生活保護は、年金など他の施策を活用しても不足する最低生活費を保障するしくみ。 ですので、年金受給している場合も、働けるようになった場合も、その分の生活保護費は引かれます。 収入の種類によって一定額が控除されたり、収入認定されない場合があります。 コロナ禍で行われた国の給付金は収入認定されず、満額給付されました。生活保護は2013年に 引き下げられ、ただでさえ苦しい生活を強いられていることに加え、コロナ禍でマスクなど新たな出費が できたこと、また物価上昇の影響は誰にも等しく起きていることなので、給付金によって生活保護費が 差し引かれないということは当然の対応だと思います。 しかし、国の給付ではそのように対応していたものが、交付金による自治体事業では変更されてしまうのは なぜなのか。整合性もありません。 また、生活保護以外の人もこの給付金は課税対象となる可能性があるということで、生活は改善していないにもかかわらず この臨時的な単発の給付金を受けたことで課税世帯となり、今後の生活困窮者支援から漏れる人も出るおそれがあります。 課題B子育て世帯以外への支援は? 3つめに、今回の対象者以外にも生活困窮している人はいるのに、なぜ対象を子育て世帯に限定するのかということです。 前回のレポートでもご紹介しましたが、昨年9月末での特例貸付の終了、今年1月からの返済開始を前にして、 返済免除の対象も狭い中で、返済が困難で破産手続き等の対応を進める人も増えているという指摘もあります。 このような中、もっと幅広い対象を想定した支援策を検討すべきだったのではないでしょうか。 長期的な視点に立った根本的な生活困窮者支援を国に求め、区も主体性を持って対応していくべきであると考えます。 練馬区「令和4年度補正予算(第3回)の概要」の資料より抜粋 (1)一般会計(補正第3号) 補正額 1326085千円 補正後の額 315029899千円 2総務費 30597千円 1職員福利厚生費 30597千円 抗原検査キット購入費 23000千円 職域接種等委託料 7597千円 11こども家庭費 1295488千円  1低所得の子育て家庭への臨時給付金経費 1295488千円 消耗品費 120323千円  通信費等 1182千円 福祉情報システム改修等委託料 4165千円 給付金 1290000千円 (2)財源内訳 一般会計 120323千円 地方特例交付金 120323千円 特定財源 1205762千円 都支出金 780428千円 繰入金 425334千円 合計 1326085千円 内閣官房・内閣府総合サイト「地方創生」に掲載されている 「電力・ガス・食料品等価格高騰重点支援地方交付金」の概要 電力 ガス 食料品等価格高騰重点支援地方交付金の創設 新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の増額強化 エネルギー 食料品価格などの物価高騰の影響を受けた生活者や事業者に対し、 地域の実情に合わせて必要な支援をきめ細やかに実施する地方公共団体の取り組みに、 より重点的効果的に活用される仕組みへと見直しを図りつつ、対策を一層強化するため 電力 ガス 食料品等価格高騰重点支援地方交付金を創設する。 予算額 6000億円 コロナ物価予備費追加額4000億円プラス規定予算2000億円 交付対象 都道府県及び市町村 対象事業 エネルギー食料品価格などの物価高騰の影響を受けた生活者や事業者に対し 支援を行う事業。以下に効果的と考えられる推奨事業メニューを提示 推奨事業メニュー   生活者支援 @エネルギー食料品価格などの物価高騰に伴う低所得世帯支援 Aエネルギー食料品物価などの物価高騰に伴う子育て世帯支援 B消費下支えなどを通じた生活者支援 C省エネ家電などへの買い替え促進による生活者支援 事業者支援 D医療・介護・保育施設、公衆浴場などに対する物価高騰対策支援 E農林水産業における物価高騰対策支援 F中小企業に対するエネルギー価格高騰対策支援 G地域公共交通や地域観光業などに対する支援 ※地方公共団体が上記の推奨事業メニューよりもさらに効果があると考えるもの については、実施計画に記載して申請可能。 算定方法 人口や物価上昇率などを基礎として算定 推奨事業メニュー 生活者支援 @エネルギー食料品価格などの物価高騰に伴う低所得世帯支援 住民税非課税世帯以外の世帯を含む低所得世帯を対象とした、 電力ガスを含むエネルギー食料品価格などの物価高騰による負担を軽減するための支援 住民税非課税世帯には 電力ガス食料品など価格高騰緊急支援給付金(仮称)として、 一世帯当たり5万円をプッシュ型で給付 Aエネルギー食料品価格などの物価高騰に伴う子育て世帯支援 物価高騰による小中学生の保護者の負担を軽減するための小中学校などにおける 学校給食費などの支援 こども食堂に対する負担軽減のための支援やヤングケアラーに対する配食支援なども可能 B消費下支えなどを通じた生活者支援 エネルギー食料品価格などの物価高騰の影響を受けた生活者に対してプレミアム商品券や 地域で活用できるマイナポイントなどを発行して消費を下支えする取り組みなどの支援 C省エネ家電などへの買い替え促進による生活者支援 家庭におけるエネルギー費用負担を軽減するための省エネ性能の高いエアコン・給湯器などへの買い替えなどの支援 事業者支援 D医療・介護・保育施設、公衆浴場などに対する物価高騰施策支援 医療機関、介護施設など、障害福祉サービス施設な、 保育所など、公衆浴場などに対する エネルギー食料品価格の高騰分などの支援 E農林水産業における物価高騰対策支援 農業者が構成員となる土地改良区における農業水利施設の電気料金高騰に対する支援や、 高騰する化学肥料からの転換に向けて地域内資源を活用する独自の取り組みなどに支援 F中小企業に対するエネルギー価格高騰対策支援 中小企業に対するエネルギー価格高騰の 影響緩和や省エネ賃上げ環境の整備などの支援 G地域公共交通や地域環境業などに対する支援 地域公共交通事業者や地域観光事業者など飲食店を含むに対するエネルギー価格 高騰の影響緩和、省エネ対策、地域に不可欠な交通手段の確保、コロナ禍にあっての 事業継続、地域特性を踏まえた生産性向上に向けた取り組みなどの支援 ※地方公共団体が上記の推奨事業メニューよりもさらに効果があると考えるものについては 実施計画に記載して申請可能 (4ページ目) 介護に関する勉強会「コロナ禍と介護」   【日時】2月25日(土)午後2時〜4時 【会場】男女共同参画センターえーる 研修室1(石神井町8-1-10) 2018年3月から2020年1月まで10回にわたって、定期的に介護の勉強会をしていました。 介護施設を見学させていただいたり、ケアマネジャー、介護職、薬剤師、歯科など、 介護を必要とする人に関わる様々な専門職のお話をお聞きしてきまして、 ずっと継続するつもりだったのですが、コロナ禍になり、休止せざるを得ない 状況になってしまいました。 今でも高齢者福祉では、コロナに感染すれば重度化する方々を前に厳しい感染対策が とられています。施設見学などはできる状況にはありません。 でも、可能なところから、情報交換、意見交換をしていこうと、 まずは「コロナ禍で介護現場はどんなことに悩み、課題と考えてきたのか」 というお話を聞くことから再開したいと思い、企画しました。 私の議員4期目の活動で企画する勉強会としても これが最後になると思います。ぜひご参加ください。 かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、42歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。 こどもの頃から猫が好きで、今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、 大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、 介護保険など制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、 2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が 進められていることに疑問を感じ、立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、 民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2019年、福祉と連携した旅行サービスとNPO等の支援活動をする「桜こみち株式会社」設立 ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。 ●ヘルパーの活動などでご高齢の方や障害のある方にお会いする機会も多いため、 コロナの感染状況を見ながら駅での配布は休止したり再開したりしています。