かとうぎ桜子区政レポート 2022年8月号 議会報告通号147号 (1ページ目) 練馬区では今、中村橋にある美術館、サンライフ練馬、図書館を改築する計画を立てています。 サンライフ練馬をなくし、美術館を広くして、図書館と一体化するという計画。 8月から基本設計の事業者の候補の募集を開始し、今年中には候補者を決定する というスケジュールが示されました。 一連のプロジェクトの事業費として81億円を見込んでいるとのこと。 コロナ禍で自治体も財政的に先の見通しの立ちづらい今、 新たな「ハコモノ」にこれだけのお金を使うべきなのでしょうか。 練馬区は「公共施設等総合管理計画」の中で、公共施設は築50年を目途に長寿命化の適否を判断、 適するものについては長寿命化のための改修を行い目標使用年数を80年にすること、長寿命化に 適さない場合には改築を行うこととしています。 しかし、現在の美術館・図書館の建物ができたのは1985年で築37年。 サンライフ練馬は1981年で築41年です。 改築などをする時期にはまったく入っていません。 同じ会派のメンバーで、7月に群馬県太田市の美術館・図書館の視察に行きました。 太田駅前の活性化を目的に2017年に美術館と図書館の併設施設がオープンしたと聞いたからです。 車での移動が主流な地域で新たな場づくりをすることで駅前を活性化する必要性があるという課題は、 駅周辺に人の流れがありしかもすでに建物はある練馬区とは違いますし、 加えて太田市では建設事業費は約21億円と、練馬区の計画よりもお金はかかっていません。 必要性という点、また財政的な面から、立ち止まって見直すべき計画ではないかと考えています。 (2ページ目) 困難を抱える女性に対する支援の充実が必要 コロナ禍による外出自粛で、 家族との関係に息苦しさを感じる人も コロナ禍になり、働き方や生活環境が「できるだけ外に出ない」という形で変化してきた中、 家族との関係性に息苦しさを感じる人もいます。 私は、福祉や住まいのことを中心とした様々なご相談を受けているのですが、コロナ禍になってから、 「家族からの暴力にもう耐えられないので家を出たい」という相談も増えています。 もともと折り合いがあまり良くなかったところに、家にいる時間が長くなって、 関係性が悪化しているケースがあるのではないかと感じます。 その人の今までの生活に合った 支援のしくみが不十分 家族とはもう暮らせない。距離を置きたい―そんな時に受けられるサポートにはどんなものがあるのでしょうか?  残念ながら、若い人の生活に合ったサポートは十分ではありません。緊急一時保護のシェルターの使い勝手が 悪い面があるのです。例えばシェルターに入っている間は携帯電話が使えないなど、一定の行動制限がある 場合も多いようです。 暴力の加害者からの追跡を逃れるため、携帯電話を使わない、今までの職場や学校に行かない、 などの対応はやむを得ない面もありますが、被害にあった側が行動に制約を受けなければならないのは つらいことですし、物心ついたときから携帯電話が身近にある若い世代の人にとっては、携帯電話が使えない生活は困難です。 使いづらい支援か、支援ゼロか、 という究極の選択 このような生活上の制約に二の足を踏んでしまい、シェルター利用を控えることで、 支援そのものから遠ざかってしまうことも起きてしまいます。シェルターが使えないならどこに行くか?  ネットカフェ? ホテル? 無料低額宿泊所? いずれにしても、泊まる場は確保できても、 メンタルケアなどのサポートは受けられないような環境に行かざるを得ないことが多くあります。 民間のボランティアベースで実施されているシェルターなどの支援もありますが、決して数が多いとはいえません。 シェルターを使うか、サポートがまったくないか、二択しかないのでは、あまりに極端すぎる。 また、身体的な暴力だけではなく、過干渉や言葉の暴力といった精神的な暴力、性暴力の被害など、 多様な状態に現状の支援制度がマッチしてい るのかという課題もあります。施設での保護という選択肢だけではなくて、 新たに暮らせる住まいがすぐに確保でき、適切なメンタルケアの支援が受けられれば十分に生活を 再スタートできる人もいらっしゃるでしょう。その人の置かれた状況に応じた柔軟な支援体制が必要です。 「女性支援法」ができたことで、 状況は改善するか そもそも、女性に対する福祉的な支援は、「売春防止法」に基づいて実施されてきました。 売春防止法による支援から派生して、暴力被害や家庭の問題など、生きづらさを抱えた女性への 支援も行なわれてきたのです。その制度の成り立ちの影響を受けて、本人主体の福祉というより 「保護」という観点が中心であり、本人が必要としている支援とは違ってしまうという課題が顕在化しているのが現状です。 支援現場からも「女性支援」の観点からの制度の見直しの必要性が訴えられてきました。そんな中、 この5月、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」ができました。 2024年4月施行の予定です。また、携帯電話など通信機器の利用制限を課題として研修を実施したり、 若年女性への支援事業などに予算が付けられています。現在、女性支援の担い手である「婦人相談員」は 非正規雇用であることがほとんどです。新しい法律には支援をする力を持った人材の養成、確保に努めること、 という条文もあります。相談員が安心して働き続けられる環境整備も必要です。 法制定や女性支援に対する新たな予算付けによって、練馬区としての女性支援の充実を図るよう提案したいと考えています。 (3ページ目) 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の概要 (法律の条文から、かとうぎ桜子が概要をまとめました。) 第1章  総則 ・女性が日常生活、社会生活を営むにあたって、女性であることにより様々な困難に直面することが 多いことにかんがみ、困難な問題を抱える女性の支援施策を推進し、人権が尊重され女性が安心して 自立して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とする。 ・「困難な問題を抱える女性」とは、性的被害、家庭の状況、地域との関係性などにより日常生活、 社会生活を円滑に営む上で困難を抱える女性をいう。 ・それぞれの状況に応じて最適な支援が受けられる体制を整備する。 ・関係機関、民間団体の協働により早期から切れ目なく実施されるようにする。 ・人権の擁護、男女平等の実現に資することを旨とする。 ・国、自治体は上記の理念にのっとって必要な施策を講ずる責務を持つ。必要に応じ、関連施策、 関連機関との連携が図られるよう配慮しなければならない。 第2章  基本方針及び都道府県基本計画等 ・厚生労働大臣は、基本方針で都道府県・市町村の基本計画の指針となるべきものを定める。 ・都道府県基本計画を定める。市町村は基本的な計画を定めるよう努力する。 第3章  女性相談支援センターによる支援等 ・都道府県は女性相談支援センター(現在の婦人相談所)を設置しなければならない。 政令指定都市は女性相談支援センターを設置することができる。 ・女性相談支援センターでは、相談対応、緊急一時保護、医学的・心理学的な援助、 就労支援・施設利用・住宅の確保・保育等の利用についての情報提供、助言などを行う。 ・女性相談員(現在の婦人相談員)は、都道府県には置く。市町村は置くよう努力する。 ・女性相談員は、必要な能力・専門的な知識経験を有する人材の登用に特に配慮しなければならない。 ・女性支援施設(現在の婦人保護施設)は、入所保護、医学的・心理学的援助、生活支援、 退所後の援助を目的とし、都道府県が設置することができる。 ・都道府県は女性支援を行う民間団体と連携し、訪問、巡回、居場所の提供、インターネットの活用、 関係機関への同行等の業務を行う。市町村は同様の業務を行うことができる。(義務ではない。) ・自治体は支援調整会議を組織するよう努める。 第4章  雑則 ・国、自治体は困難な問題を抱える女性への支援について国民の関心、理解を深めるための教育、啓発に努める。 ・女性が困難な問題を抱えた場合にこの法律に基づく支援を適切に受けることができるよう教育、啓発に努める。 ・国、自治体は効果的な支援方法、心身の回復を図るための方法等に関する調査研究の推進に努める。 ・国、自治体は女性への支援に関わる人材の確保、養成、資質の向上を図るよう努める。 ・国、自治体は民間単体への必要な援助を行うよう努める。 ・20条〜22条は、支援に関する費用について定める項目 第5章  罰則 支援に関わる秘密を漏らした者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する。 (4ページ目) 8月末に超党派の議員で演説会を予定しています / 練馬区議会の次の定例会は9月7日からの予定 ☆昨年の衆議院選挙、今年の区長選挙では、超党派の野党系議員で統一候補を応援しました。 政党を越えて協力し合う取り組みがこれだけ実現したのは初めての経験でした。衆議院選挙では結果が実りましたが、 区長選挙ではあと一歩のところで現職に及ばず…普段から区政についてもっと皆さんにお伝えしていかなければならないと反省しました。 そこで、選挙の時だけではなく、普段から複数の議員で協力 してできる活動を模索しながら、区政について皆さんにお伝え していく機会を作りたいと考えています。 その第一弾のとりくみとして、8月28日(日) 午後5時から石神井公園駅で駅頭演説会を行います。 また、10月29日の午前中には練馬駅近くで報告会も企画中。   詳細はまたご案内させていただきます。              ☆次回の練馬区議会定例会は9月7日から10月14日の予定です。 秋の定例会では、前年度の決算の審査を行います。 前回のレポートでも課題をご紹介したコロナ対策や物価上昇への対応のこと、 今回のレポートでご紹介した美術館の改築計画のことなどを取り上げたいと考えています。 かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、42歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、 今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、 大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、 介護保険など制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、 立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2019年、福祉と連携した旅行サービスとNPO等の支援活動をする「桜こみち株式会社」設立 ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。 ●ヘルパーの活動などでご高齢の方や障害のある方にお会いする機会も多いため、コロナの感染状況を 見ながら駅での配布は休止したり再開したりしています。