かとうぎ桜子区政レポート 2022年7月号 議会報告通号146号 (1ページ目) 6月の区議会定例会では、補正予算議案が提出されました。主な内容は、 ・コロナ禍における産業融資あっせんを、9月まで延長した分の費用 ・要介護状態にある人を介護している家族がコロナに感染し、  支援が必要な場合の宿泊事業費 ・生活困窮者自立支援金を8月まで延長した費用 ・住民税非課税世帯に対する臨時特別給付金 ・4回目のコロナウイルスワクチン接種費用 ・子宮頸がんワクチンのキャッチアップ接種費用 ・物価高騰への緊急対応として9月分までの学校給食の食材費の補助 ・子育て世帯生活支援特別給付金 今回の補正予算は、 ・生活困窮者自立支援金は利用できる人の対象範囲が狭すぎて、 コロナ禍に生活に困窮する人のごく一部の人しか利用できず、 全国社会福祉協議会からも改善を求める声明が出ており、改善が必要。 ・非課税世帯の臨時給付金は2021年度の給付対象だった人は 今回は対象にならず、非課税世帯への支援も限定的である。 ・物価高騰が今後も長期化した場合、秋以降の学校給食への 補助は継続するのか?「保護者の責任」として給食費の値上げが 行われる懸念がある。 といった課題があります。 【区の補正予算の資料より抜粋】 令和4年度 6月補正予算について (1)補正予算の内容 新型コロナワクチンの4回目接種や、コロナ禍における区民や 事業者の支援などを着実に実施するための緊急対策予算 (2)補正予算の主な項目 1.感染拡大防止と医療提供体制の充実 予算額5億3938万円 2.区民・事業者の支援 予算額23億1319万円 3.その他(子宮頸がんワクチンキャッチアップ接種) 予算額2億8979万円 計31億4236万円 ※項目ごとに四捨五入しているため、各欄と計が一致しないことがある。 (2ページ目) 「障害のある人の意思疎通支援のための条例」 障害に応じたコミュニケーションを保障することは人権保障 2022年6月の区議会定例会で「障害者の意思疎通の促進と手話言語の普及に関する条例」が新しくできました。 障害のある人は、その障害の状態によって様々なコミュニケーション支援が必要で、その充実を求めて運動しています。 例えば手話を使う聴覚障害のある人は、手話を言語として尊重する社会になってほしいという願いを持って運動 をしてきました。以下は2018年12月の議会で私が質問した内容ですが、今まで障害のある人のコミュニケーション 支援が不十分だったことを感じていただけると思いますので、改めてご紹介します。 私たち(音声による日本語を母語とする人)にとって、「日本語」は、思考したり人にものを伝えるために重要な言語である。 それと同様、手話はろう者にとってコミュニケーションツールであり、アイデンティティ形成のために重要な「言語」です。 しかし、世界的に見ても、手話の価値は長く否定され、音声言語と比べて低く見られて差別されて、 ろう者が言語として手話を使う権利が侵害されてきた歴史があります。例えばろう学校でもこどもたちが 手話を使うことを厳しく禁じられてきた経緯があります。 練馬区議会では手話言語法を実現させてほしいというろう者の声を受けて、2014年に「手話言語法を求める意見書」を 提出しましたが、現在は全国すべての自治体が同様の意見書を提出している状況です。 また、まずは住民に身近な自治体での取り組みを進めてほしいという声により、全国各地の自治体で 手話言語条例が作られています。 私が以前、学校教育における手話教育について質問した際、区の教育委員会事務局は、 「学習指導要領に記載されていないので基本的に教科で学習しない。総合的な学習の時間で学ぶ場合もある」 と答えました。しかし、学校教育の中で手話言語を適切に教えてこなかった歴史を振り返れば、 それがいまだ十分に体系的に実施されていないのは、手話が「音声言語の補足的な存在」と誤認されている 現状があるということなのではないでしょうか。 聴覚に障害のある子は、人工内耳や補聴器を使用することも多く、それらを用いてろう学校ではなく地域の学校に 進学することも多くなっています。人工内耳による音声言語の活用と手話を併用しながら生活し、 活躍している人も多くいて、どちらか一方しか選べないわけではありません。 聴覚に障害のある当事者と保護者に対して、手話を含む情報保障のための様々な選択肢の情報を 提供することも教育機関としての重要な役割です。ルールがないからできないというならば、 ルールを定めなければならないのではないか。練馬区として手話言語条例を策定すべきなのではないでしょうか。 この質問をした時には練馬区は「手話が言語であることは2011年に改定された障害者基本法に定められており、 区としてもコミュニケーションのとりくみを着実に進めているため、新たに手話言語条例を制定する考えはない」 と答弁しました。 しかし、2021年2月の区議会定例会で、多様な障害へのコミュニケーション支援を充実するための条例の検討に 着手すると方針を転換しました。そして、この6月に条例制定。  今回新しくできた条例は、手話言語のみではなく、様々な障害のある人の支援について定められています。例えば ・失語症の人は脳の障害の状態により必要とする支援が違うことがある ・重度の身体障害で言語障害のある人は慣れた介助者が聞き取る必要があることがある ・発語が少ない知的障害のある人は絵によるコミュニケーションが有効な場合がある ・視覚障害のある人は必ずしも点字が使えない場合もあるので音声による支援など様々な方法が必要なことがある (例えば糖尿病で中途で失明した場合、点字を新たに覚えるのが困難なことも。) このような、多様なコミュニケーション支援の必要性を改めて認識しルールにすることは、 「新しい条例を作るつもりはない」と言っていたときより前進しているといえますが、 多様である分だけ「理念を掲げるだけ」で終わりにならないよう、 今後も具体的な取り組みについて提言していきたいと思います。 特に、以前の私の質疑の中でも取り上げた、学校教育における取り組みの充実については残念ながら なかなか具体的に進みづらいので、今後も指摘していきたいと考えています。 (3ページ目) 練馬区障害者の意思疎通の促進と手話言語の普及に関する条例の概要 第1条 この条例は、 ・障害の特性に応じた多様な意思疎通手段の充実 ・手話が言語であることの普及 に関し、基本理念を定め、練馬区の責務、区民等、事業者の役割を明らかにし、 区の施策について必要な事項を定めることにより、障害者の社会参加を促進する。 それをもって、「障害の有無にかかわらず誰もが人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現」 に寄与することを目的とする。 第2条 用語の定義 例えば「多様な意思疎通手段」として、「手話、触手話、筆談、要約筆記、文字の表示、点字、指点字、 音訳、平易な表現、身振り、図、写真、コミュニケーションボード、代読、代筆、代弁、情報支援機器、 その他の障害者が日常生活および社会生活において使用する意思疎通のための手段」を挙げている。 第3条 障害の有無にかかわらず、誰もが互いに理解し、その人格および個性を尊重しなければならない。 2 多様な意思疎通手段の充実は、障害者が自ら選択する機会が確保されることにより行わなければならない。 3 手話が言語であることの普及は、ろう者にとって、日常生活または社会生活を営む上で重要な言語である という認識の下に行わなければならない。 第4条 区は、多様な意思疎通手段の充実および手話が言語であることの普及に関する施策を、 総合的かつ計画的に実施する。 2 区は、上記のとりくみを区民等および事業者と協働して取り組む。 3 区は、区民等・事業者による多様な意思疎通手段の理解、確保、 手話が言語であることの理解に向けた自主的な取組を促進するため、必要な支援を行う。 第5条 区民等は、基本理念への理解を深め、区が実施する施策に協力するよう努める。 第6条 事業者は、基本理念への理解を深め、区が実施する施策に協力するよう努める。 2 事業者は、事業活動を行うに当たり、障害者が障害の特性に応じた意思疎通手段を利用しやすい環境の整備に努める。 第7条 区は、第4条に基づき、つぎに掲げる施策を実施するものとする。 (1)多様な意思疎通手段の選択の機会の確保に関する施策 (2)情報通信技術を活用した意思疎通手段の利用の支援に関する施策 (3)多様な意思疎通手段の理解の促進に関する施策 (4)手話が言語であることの普及に関する施策 (5)前各号に掲げるもののほか、区長が必要と認める施策 第8条 区は、7条各号に掲げる施策を実施するときに必要に応じて障害者その他の関係者から意見を聴取し、その意見を反映するよう努める。 【区が実施する意思疎通支援の充実】 ・すべての町内窓口で遠隔手話通訳(2022年10月から) ・区から送付する郵便物の封筒に、視覚障害のある人が利用できる音声コードを添付する。 税や選挙などの重要な文書には希望に応じて点字シールを添付、文書発送をメールでお知らせ(2022年度から) ・中村橋の心身障碍者福祉センターで、障害のある人が活用できるICT機器の相談・体験・ 貸出・操作方法のサポートなどを行う。(2023年1月から) ・区民・事業者向けに、様々な場面ごとに具体例を示したコミュニケーションガイドブックを作成する。 また、区民・事業者向けの養成講座を実施する。(2022年7月から) (4ページ目) 新しいポスターを2種類作成しました。ご掲示ご協力お願いします! 新しいポスターを2種類作成しました。ぜひ、練馬区内のご自宅や職場等で外の塀などにご掲示いただけたら幸いです。 ご協力いただける方は、こちらのフォームにご記入ください! → https://forms.gle/exeFumFnAbyaBCh88 練馬区議会の任期は来年5月末までとなり、4月の統一地方選挙のときに練馬区議会議員選挙も行われる予定です。 今回作成したのは、その選挙の前に街中に掲示するポスターです。 皆さんにご承認いただけたら、私はあと1期、活動を続けられたらと思います。 福祉のことを中心とした取り組みや駅頭演説、報告会などは継続しながら、 他の議員さんとも連携しながら区政について皆さんにもっと身近に感じていただけるしくみを考えていけたらと思います。 来春の選挙後の5月に、2つの演説会、講演会を企画しました。 ひとつは、先日の区長選挙に出た吉田健一さんとの駅頭演説会。 もうひとつは、北本市議会議員の桜井さんとの講演会。 私が2015年に非営利団体のワークショップに参加した時、同じ グループでたまたまお話をさせていただいたのが桜井さんでした。 当時桜井さんは公務員でお仕事をされていたのですが、 その後、北本市の議員さんに。公務員として働く中で見えていたことが 議員の活動に活かされていることがあると思いますし、北本市のこどもの権利条約策定をがんばってこられたと伺いました。 そんなお話をお聞きする会を、2023年5月20日の夜、ゆめりあホールで行います。 かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、42歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、 今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、 大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、介護保険など 制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、 立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2019年、福祉と連携した旅行サービスとNPO等の支援活動をする「桜こみち株式会社」設立 ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。 ●ヘルパーの活動などでご高齢の方や障害のある方にお会いする機会も多いため、 コロナの感染状況を見ながら駅での配布は休止したり再開したりしています。