かとうぎ桜子区政レポート 2022年6月号 議会報告通号145号 (1ページ目) 4月末、区議会の会派「インクルーシブな練馬をめざす会」のメンバーで、 桜新町にある世田谷区立産後ケアセンターの視察に行きました。 世田谷区では、出産した人の中で、近所に祖父母がいない、同居していない人が70.5%、 35歳以上で出産する人が47.2%、第1子出産時の平均年齢は33.02歳で上昇傾向だそうです。 出産の年齢が上がると心身への負荷も大きく、サポートしてくれる身内も近くにいないことが多いということです。 そのため、出産後の心身の疲れをいやしたり、赤ちゃんへの声かけや遊び方を知ったりする場として、 ショートステイとデイケアをやっているそう。医療機関ではない形で出産後の支援のための宿泊を伴う 支援制度がなかったので、消防法や建築基準法などの基準については国や都に相談しながら施設を作り、 2008年から産後ケア事業を開始したそうです。 現在の運営は日本助産師会に委託されています。予約をしていても体調不良で来られなくなる方もいるので、 区からの委託費は1人あたりいくらではなく年間の運営費として出されることで安定した運営ができるというお話は、 ハード面のみならずソフト面の継続的支援の必要性という点で印象に残りました。 (2ページ目) 「正規雇用が減らされ、非正規で支えられる区政」 正規雇用の公務員が減らされ、非正規が増える現状 練馬区は、「人口が同規模の他区と比較して、福祉系・技能系職員の比率が高い状況にある。 事務系・一般技術系職員が占める割合を高めながら、効率的な執行体制を確立する必要がある」 として、2018年度〜2022年度の5年間で職員定数を200削減する計画を立てています。   正規職員の定数を削減することにより、多くの役割を非正規、委託、人材派遣で支えるようになっています。 多くが福祉等の専門性を要したり、地域の他機関や区民の皆さんとの連携が必要な重要な職種である にもかかわらず、将来的な見通しを立てづらい非正規職員として働いている現状があります。 このように、行政の仕事で不安定雇用が生じることは、 「官製ワーキングプア」として批判されていることでもあります。 区は職員の育成について根本的に考えを改めるべきではないでしょうか。 以下は議会で質疑した概要ですが、非正規公務員の9割近くが女性であり、 その専門性や働きぶりが昇給など待遇改善に活かされない現状も問題です。 官製ワーキングプアは女性の貧困も助長している 【議会質疑の概要】 (かとうぎ桜子) 2020年度から非常勤・臨時の公務員が「会計年度任用職員」と呼ばれる制度がスタートした。 この非正規公務員のうち、9割近くが女性である。女性の貧困を助長しているのでは? (職員課長) 男性だから、女性だからということでの採用はしておらず、適正な選考をした結果である。 (かとうぎ桜子) 相談員や有資格者などの専門職が非正規である合理的な理由があるのか? (職員課長) 会計年度任用職員制度ができる際に、職務内容、責任の度合などで設定している。 その職を正規職員にするつもりはない。 (かとうぎ桜子) コロナ第5波で困難をきわめた保健所体制も、緊急的に非正規の保健師が支えている。 地域にとって必要な対応を非正規に頼る体制は見直すべき。 職員課長) 最大職員数を抱えることは地方自治法の考え方に反する※。 正規の保健師も増やしてはいる。必要な部分は非正規を活用する。 (かとうぎ桜子) 公共の役割、職員の働き方は改善してほしい。 会計年度任用職員の人事評価はどのように行っているのか? (職員課長) 服務規律や必要な知識経験、求められる役割を果たしているかなどを所属長が評価し、次年度の再任用の判断に活用している。 (かとうぎ桜子) 会計年度任用職員は昇給がない。人事評価が昇給やその先の継続性につながる仕組みが必要。 (職員課長) 人事評価が次年度の再任用につながればそれはモチベーションになると考えている。   ※「地方自治法の考え方に反する」とは、法律内に「地方公共団体は、常にその組織及び 運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を 図らなければならない。」とあることを指すと思われるが、 官製ワーキングプアを生み出すことは組織の合理的運営といえるのでしょうか? 以下の表は、2003(平成15)年度〜2015(平成27)年度の職員定数削減の推移です。 表 平成15年度 職員数 5623 平成16年度 職員数 5531 削減数 92 平成17年度 職員数 5433 削減数 98 削減数累計 190 平成18年度 職員数 5321 削減数 112 削減数累計 302 平成19年度 職員数 5211 削減数 110 削減数累計 412 平成20年度 職員数 5077 削減数 134 削減数累計 546 平成21年度 職員数 4973 削減数 104 削減数累計 650 平成22年度 職員数 4882 削減数 91 削減数累計 741 平成23年度 職員数 4513 削減数 172 削減数累計 913 平成24年度 職員数 4582 削減数 128 削減数累計 1041 平成25年度 職員数 4513 削減数 69 削減数累計 1110 平成26年度 職員数 4495 削減数 18 削減数累計 1128 平成27年度 職員数 4435 削減数 60 削減数累計 1188 (3ページ目) 会計年度任用職員とは それまで行政で働く非常勤、アルバイトと位置づけられていた職種を「会計年度任用職員」 という名称で任用するようになりました。(地方公務員法の改定で2020年度から実施されている。) 任用期間は1会計年度で、練馬区では4年目までは公募によらず再任用できるしくみとしています。 以下は岐阜県飛騨市が制度導入前にまとめた資料ですが、会計年度任用職員制度の経緯について分かりやすいものです。 https://www.city.hida.gifu.jp/uploaded/attachment/9211.pdf 【練馬区の会計年度任用職員の例】 職名・勤務内容は「練馬区会計年度任用職員設置要綱」より。 以下は一例ですが、専門性が求められるもの、他機関への働きかけや指導、家族との連絡が必要だったり、 本人の権利に関わる部分も多いです。 このような重要な職種を不安定な非正規雇用で支えている現状は課題であると考えています。 ・スクールソーシャルワーカー 課題を抱える児童・生徒の置かれた環境への働きかけ、学校内の教育相談体制への支援、 保護者・教職員等に対する支援・相談・情報提供、関係機関等との連携・調整 ・学校生活支援員 児童生徒に対する学習支援、学校内等の移動・日常生活上の介助、特別支援教育に関すること、 学校経営の安定に関すること ・男女共同参画センター相談員  配偶者からの暴力についての相談を受ける ・母子・父子自立支援員兼婦人相談員  女性やひとり親の相談を受ける ・資産調査専門員  生活保護を受けている人の資産の調査、年金・手当等の受給権の調査・手続き同行  扶養義務者に対する調査、ケースワーカーの業務の支援 ・就労支援専門員  生活保護を受けている人の就労に関して必要な相談、助言、指導、援助、情報提供をする ・精神保健福祉支援員 生活保護を受けている社会的長期入院患者の退院促進、精神障害のある生活保護受給者の 処遇方針策定・見直しに関する助言、相談支援事業所等との連携、医療機関等との連携 ・介護保険認定調査員 介護保険認定調査、居宅介護支援事業者に対する指導・助言 ・地域精神保健相談員 精神疾患の未治療者・治療中断者への訪問支援、障害支援区分の認定調査、精神障害のある人等への相談・助言・指導 (4ページ目) 練馬区議会定例会は6月1日〜6月21日 今年度最初の定例会は6月1日〜6月21日。 各議員が所属する委員会など、人事があります。 また、補正予算の質疑も予定されています。 練馬区議会の任期は4年間、今の期は来年の5月までとなります。 私の4期目の活動最後の1年間、区政について皆さんに今まで以上に 情報発信する工夫を進めていきたいと考えています。 区政報告会・勉強会をおこないました。 5月22日、区政報告会・勉強会をおこないました。 まず前半は、区政について、美術館の建て替え計画や 大泉の稲荷山公園の計画、谷原保育園の廃止など、 最近の区政で課題になっていることについてご報告 しました。後半は、前回の区政レポートでもご紹介した 高齢者の住まいについてご紹介しながら、ご参加いただいた皆さんと意見交換をさせていただきました。 高齢者の住まいに関するアンケートは引き続き、ご回答を募集しておりますので、ぜひご協力ください。 https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSd94OEBLIGJI7aumtdaws645vIn21lQSTnAGWFe0EItv1y6Ig/viewform                                    当日の様子は後日、短くまとめた動画を配信したいと考えています。 市民ふくしフォーラムのyoutubeページをご覧ください。  https://youtu.be/ULJbDDUEJuE かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、42歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、 今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、 大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、介護保険など 制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、 立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2019年、福祉と連携した旅行サービスとNPO等の支援活動をする「桜こみち株式会社」設立 ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。 ●ヘルパーの活動などでご高齢の方や障害のある方にお会いする機会も多いため、 コロナの感染状況を見ながら駅での配布は休止したり再開したりしています。