かとうぎ桜子区政レポート 2022年1月号 議会報告通号142号 【1ページ目】 2021年秋の衆議院選挙の際、 山岸一生さん、区議会で同じ会派の岩瀬たけしさんと大泉学園駅で。 区政、国政と、仲間を増やしながら区民の皆様の声がしっかり反映される政治を目指します。 補正予算が出されています。12月は、7日に補正予算の審査があり、子育て世帯の給付金のことも含めて質疑されました。 そこでひとまずは児童手当の対象になる世帯に先行的に5万円を給付するということが決定されたのですが、 その後、国では残り5万円もクーポン券でなくてもかまわない、また10万円一括給付にしてもかまわないという話が出てきました。 ただでさえ、なんとか年内給付を目指そうとがんばっていた自治体にとって、12月中旬になって根本からやり方を変えるのは厳しい状況。 練馬区では、年内5万円給付はそのまま実施し、残りの5万円給付と児童手当対象外世帯への早急な 10万円一括給付を実施することで、12月27日に改めて補正予算の審査をしました。 コロナウイルスそのものは、変異株がどのようなものか、どのくらい流行するのか予測がつきづらい部分がありますが、 コロナ禍に伴う支援制度が右往左往するのは人災のようなものです。今回のレポートの中面に書いた貸付のしくみなどもそうですが、 実際に国民の皆さんの生活の困難をサポートするのは基礎自治体レベルの現場です。現場の声に耳を傾けた国政への転換を求めたいと思います。 ☆2022年は、4月に練馬区長選挙が予定されています。現職の区長は立候補を予定しているようです。 今の区長は、都庁で働いてきた人。都庁出身の視点でトップダウンの区政を行っているように感じています。 地域で暮らす、弱い立場に置かれがちな一人ひとりの声に耳を傾けた温かさとオリジナリティのある区政を切り開くことのできる新しい区長候補を推し出せたらと考えています。 【2・3ページ目】 コロナ禍における貸付支援の現場の声、施策に反映を コロナ禍において収入の減少や失業など生活困窮している世帯を対象に、生活福祉資金の特例貸付が行われており、社会福祉協議会が窓口となります。 従来、社会福祉協議会のもとで実施されてきた生活福祉資金の貸付は経済的な支援のみならず生活の支援も重要な役割です。 しかし今回、特例貸付という形で貸付件数が激増する中ではどうしても生活支援よりも貸付がメインとなりがちなのではないでしょうか。 社協職員が自ら行った調査、提言 関西社協コミュニティワーカー協会では、全国の社会福祉協議会の現場で働く職員を対象に、 コロナ禍における特例貸付を中心とした業務についての緊急調査を行っています。 この調査では、1000人を超える全国の社会福祉協議会職員の声を集めて、それに基づく提言を発表しています。 短期間の特例で行われるはずだった貸付が、コロナの長期化の中で期間延長が続き、貸付に代わって幅広い対象者が 利用できる根本的な困窮対策が示されないままであること、そして丁寧な生活支援が十分にできないことに悩みながら 現場にあたっている姿が見えてきます。 厳しい社会情勢が長期化している今こそ自治体は困窮者支援にあたる現場の声に耳を傾け、対策をとるべき、 という観点から議会で取り上げました。今後も体制の改善を求めていきたいと思います。 なお、関西社協コミュニティワーカー協会様には連絡を取り、議会質問で取り上げる許可をいただき、 また質問内容も確認していただきました。 質問@特例貸付の対象者への生活支援はどのように、どのような職員体制で行っているか。 回答:本制度は東京都社会福祉協議会が実施主体であり、練馬区社協が申請窓口となって運用。 2020年度は申請が急増したため、区職員4名の派遣。2021年秋現在、社協の職員7名と 派遣職員11名で対応しており、必要に応じて生活サポートセンターの支援につないでいる。 質問A職員の感染防止やメンタルケアなどの支援はどのように行っているか。 回答:相談窓口への飛散防止フィルムの設置や消毒の徹底などにより感染防止対策をとっている。 ストレスチェックの実施や産業医の面談など、職員のメンタルヘルスケアに努めている。 質問B現場で支援にあたる職員の意見聴取の機会を設けて今後の体制に生かすべき。 回答:生活サポートセンターでは福祉サービス事業者や社協職員などで構成される運営委員会において、 相談件数や内容の傾向、現場の声をふまえた相談体制について協議している。増加が見込まれる 生活困窮者の相談に対応するため、今年度、相談支援員を3名増員した。 〇生活福祉資金とは(全国社会福祉協議会ホームページより) 低所得者や高齢者、障害者の生活を経済的に支えるとともに、その在宅福祉および社会参加の促進を 図ることを目的とした貸付制度。例えば就職に必要な知識・技術等の習得や高校、大学等への就学、 介護サービスを受けるために費用等の貸付があり、相談支援も行う。練馬区では、2019年度は122件、2020年度は96件。 〇生活福祉資金の特例貸付とは 新型コロナウイルスの影響による休業、失業等により収入が減少した住民税非課税世帯が対象。 緊急かつ一時的な生計維持のための生活費の貸付である緊急小口資金と、生活の立て直しまで一定期間(3か月) の生活費の貸付である総合支援資金の特例がある。練馬区では、緊急小口資金特例は2020年度8387件。 総合支援資金特例は2020年度13179件。 〇生活サポートセンターとは 生活困窮者自立支援法に基づき、練馬区が社会福祉協議会に委託している相談窓口。 〇生活困窮者自立支援金とは 2021年7月にスタート。総合支援資金の再貸付を借り終えた世帯に対し、世帯人数に応じた月額を最大3か月 支給するというしくみだったが、11月の閣議決定で緊急小口および総合支援資金の初回貸し付けを借り終えた 世帯へと対象が拡充され、期間も最大6か月となった。しかし、貸し付けを受けることが前提である制度は変わっていない。 以下は、調査に基づいてまとめられた提言内容の抜粋です。紙面の都合ですべての詳細はご紹介しきれませんが、 特にこの調査で得られた声として特徴的なところをご紹介します。 関西社協コミュニティワーカー協会・社協現場の声をつむぐ1000人プロジェクト 1,184人の社教職員からの提言・抜粋 1.「自助」の名のもとに公的責任を後退させないでください  約1年以上にわたり、生活に困窮する住民への主たる生活支援策が特例貸付だったことに、 現場で相談者の苦しい窮状に触れる社協職員は大いなる疑問と憤りを感じていました。 「自助」の名のもとに生活に苦しむ人々に債務を押し付け、本来国が果たすべき公的責任を 後退させることは絶対にやめてください。 2.すべての困窮する人に支援が届く生活困窮者支援金制度の拡充を 特例貸付開始から1年以上が過ぎ、貸付を中心とした困窮者支援に生活困窮者自立支援金(以下、支援金) が創設されたことは、生活に苦しむ人々にこれ以上の負債を負わさない政策として一定の評価ができると考えます。  しかし、支援金の対象はすべての特例貸付を借りきった世帯で、貸付利用世帯のごく一部であり、 申請受付期間も短期間です。これまで貸付を利用せずにやりくりしてきた世帯 、長期化する新型コロナウイルスの影響で今まさに困窮している世帯は支援金の対象外です。 特例貸付を重ねて負債額を増やすほど、相談者の自立再建は遠のきます。償還が難しい世帯に貸付を延々と続けるのは、 私たち社協職員の仕事ではありません。生活に困窮する世帯が負債を増やすことなく給付が受けられるよう、 支援金制度の対象拡大と期間の延長を提言します。 3.入りやすく出やすい生活保護の弾力的運用を 4.包括的で継続的な生活困窮者支援ができる生活困窮者自立支援の制度を  自立相談支援機関についても、専門性を有した常勤の相談支援員配置ができるよう補助基準額、 国庫補助率の増を図り、各自治体での重層的な支援体制整備の基盤を強化するよう提言します。 5.「相談支援付き貸付制度」として生活福祉資金貸付の体制強化を  本来の生活福祉資金は単なる貸付事業ではなく、生活相談、生活支援の入り口です。 緊急事態に増幅される生活困難・ニーズを捉え、早期に支援につなげることができる体制が必要不可欠です。 生活福祉資金が「相談支援付き貸付制度」として機能できるよう、相談業務に従事する職員の雇用の安定と身分保障が できる財政措置を強く求めます。また、特例貸付の長期にわたる償還管理に対しても、体制整備に向けた財政措置を別途図る必要があります。 6.現場の声に向き合い実態を反映させる政策と運用を  私たち社協職員が疲弊した要因は、相談支援を骨抜きにした膨大な貸付事務だけではなく 、長期化する中で制度の有効性に疑問を感じる現場実態が反映されることなく、頻繁に繰り返された制度の変更です。 詳細が現場に明かされないまま公表される運用変更に対し、相談者から回答できないことへの罵声を浴び、体制整備に追われ、 こころと身体に影響を受けるのは現場の職員です。日夜、貸付を必要とする方々の対応をおこなう社協の現場の声に向き合い、 貸付を通してみえる住民の課題を把握するとともに、有効な現場支援を講じていただくよう求めます。 7.社会福祉の相談援助職の処遇を適正化 8.貸付現場と協働した制度検証とそれに基づく改善を  特例貸付終了後、速やかにその有効性と課題に関する検証をおこない、災害等を含めた緊急時と 平常時の生活福祉資金制度と国民の生活基盤を守るセーフティネット策の強化につなげることを提言します。  検証に際しては、私たち貸付現場の声を聴いてください。すべての都道府県と市区町村社協を対象に調査を実施し、 検証過程に現場職員の声を反映し、一緒に考えさせてください。 【4ページ目】 養護老人ホームの見学をさせていただきました。 私は高齢の人や障害のある人の住まい探しのお手伝いをする活動をしているのですが、そのご縁で知り合った、 都内の養護老人ホームを12月に見学させていただきました。養護老人ホームは都内に33か所(そのうち特別区内11か所)あります。 2000年から介護保険制度が始まり、高齢者施設やサービスの多くは介護保険制度のもと、利用者が契約を結ぶサービスとなりました。 しかし、養護老人ホームは介護保険には移行せず、老人福祉法上の「措置施設」として残りました。本人の契約ではなく、 行政が必要性を判断して措置するのです。高齢になり、ひとり暮らしが困難な人が入所します。例えば病院から退院をするけれど ひとり暮らしは難しいという場合や、家族の虐待から逃れる場合、知的や精神の障害のある人など、「介護のサポート」とは違う 生活支援が必要な人が多いようです。制度のはざまで、どんな支援をして良いか悩む状況になったときに活用できる施設といえます。 その入所費用はその人がもともと住んでいた自治体が負担するしくみ。介護保険も生活保護も国や東京都からの財源がありますが、 養護老人ホームは2005年の三位一体改革で全額が基礎自治体の負担になったそう。そのため、せっかくの 「制度の狭間にある人の支援」ができる養護老人ホームなのに、自治体が財政負担をおそれて措置を控える「措置控え」も起こりがち。 また、行政内部が縦割りで、地域包括支援センターや生活保護行政から養護老人ホームにつながるケースもあまり多くない という課題もあるようです。地域の中でひとりでの生活に困難が生じたときに活用できる施設としてもっと積極的に活用すべきと感じました。 以前、議会で質問した時に、練馬区は養護老人ホームの措置は必要に応じて適切に活用しているという答弁がありましたが、 具体的にはどのようなプロセスで活用されているのか、また都内の各自治体はどのように取り組んでいるか、今後調査できたらと思います。 多くの福祉サービスが契約に移行する中であえて措置として残した意義をとらえ、また、契約制度からはこぼれ落ちてしまう、 生活困難を抱えた人の支援のあり方を考えていかなければならないと思います。 かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、41歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、 今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、 大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、介護保険など制度運用の改善と 地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、 立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2019年、福祉と連携した旅行サービスとNPO等の支援活動をする「桜こみち株式会社」設立 ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。 ●ヘルパーの活動などでご高齢の方や障害のある方にお会いする機会も多いため、コロナ禍になってしばらく 駅頭でのレポート配布を休止していましたが、ワクチン接種が済み、2021年10月から再開しました。