かとうぎ桜子区政レポート 2021年12月号 議会報告通号141号 【1ページ目】 秋の議会で一般質問をしました。 練馬区議会では、年に1回一般質問の機会があります。私は秋の区議会で一般質問をしました。内容は、 ☆新型コロナウイルスのワクチン接種のインターネット 予約が最初まったくつながらなかったので、システムの改善をすべき。 また、障害のある人等の送迎や作業所単位での接種、予約支援など接種の支援体制を今後も継続し、 当事者に情報が届くような周知の工夫を。 ☆コロナ禍における貸付は、貸付だけではなく生活支援 につなげられる体制の充実を。また、生活困窮者自立支援金は対象者が限定的なので、国に改善を求めるべき。 また、今後、生活保護を必要とする人が増えることも想定した体制の充実を。 ☆コロナ禍において、介護サービスの利用控えが起きて いるが、支援を要する人が孤立することを防ぐための支援の充実を。 ☆練馬区の2020年の自殺者数は、20代以下の女性に 多く、また80代の女性の自殺が増加している。女性が相談したり悩みを話すことのできる場の充実を。 ☆障害のある人の通所事業所に関する報酬体系が今年度 から変わったが、活用されていない現状について現場の声を聴き、 必要とするすべての障害者が安心して通所サービスを利用できる体制づくりを。 ☆精神障害者の地域包括ケアを進めるにあたり、核となる専門職・機関を明確にするなど 実効性のあるものにすべき。 などの質問をしました。詳細は今後区政レポートでもご紹介しますが、ブログにも載せておりますので、ぜひご覧ください。 【2・3ページ目】 精神障害のある人の地域包括ケアを進めるには 「地域包括ケアシステム」って、聞いたことがありますか? 「地域包括ケアシステム」はもともと高齢者の分野で言われ始めました。 2005年の介護保険法改定の際に初めて示されたものです。 厚生労働省のホームページには、 「団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で 自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が 一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を実現していきます。  今後、認知症高齢者の増加が見込まれることから、認知症高齢者の地域での生活を支えるためにも、 地域包括ケアシステムの構築が重要です。」とあります。  病気になっても、介護が重くなっても、自分が住み慣れた地域で、医療や介護をはじめとする 包括的なサポートができる体制をめざそう、ということです。そしてまた、高齢者の相談ができる場として 地域包括支援センターという相談窓口ができました。  こうした体制が示されてもう16年になりますが、まだまだ浸透していないのではないでしょうか。 先日行なった区政報告会では、地域包括ケアシステムについて知っていた参加者は約半数でした。 また、この理想を実現するための実効性のある体制が取れているかというと、まだまだではないかとも思います。 住み慣れた家で、ヘルパーが訪ねる以外は誰にも会う機会なく、ひとり寝室のベッドにいる、という高齢の人の話もお聞きしたことがあります。 「住み慣れた地域で暮らす」のは、単に物理的に地域にいれば良いということではないと思います。 自分がやりたいことをし、会いたい人に会える、といったこともできてこそ、地域で暮らす意義があるのではないでしょうか。 地域包括ケアシステムが本当に理想的なものになるように、私も現場の実践を重ねながら、より良い体制づくりを提案していきたいと思います。  そんな理想と課題のある地域包括ケアシステムですが、今、それを精神障害のある人にも広げていくという流れにあります。 「精神障害」ってどんな障害? そもそも精神障害とは、どんな障害でしょうか。東京都福祉保健局のサイト「ハートシティ東京」には、 「精神疾患のため精神機能の障害が生じ、日常生活や社会参加に困難をきたしている状態のことをいいます。 病状が深刻になると、判断能力や行動のコントロールが著しく低下することがあります。 正しい知識が十分に普及していないこともあり、精神疾患というだけで誤解や偏見、差別の対象となりやすく社会参加が妨げられがちです。」とあります。 【精神障害の種類の例】 統合失調症、うつ病、双極性障害、パニック障害、強迫性障害、PTSD 、アルコールや薬物などの依存症、パーソナリティ障害   など 【症状の例】 (小瀬古伸幸「精神疾患をもつ人を、病院でない所で支援するときにまず読む本」医学書院にあげられている事例より) ・リストカットが止められない ・薬を決められた量よりもたくさん飲んでしまう ・アルコールを飲まないようにしようと思っても やめられない ・別人格が現れることがある ・躁状態だと1日いくつも予定を入れるなどたくさん活動し、うつになると動けなくなってごはんも食べられなくなり入院が必要になる 世界精神保健調査によれば、日本の精神障害の生涯有病率(一生のうち一度は病気にかかる人の割合)は 22.9%だそう。誰にでも身近なものといえるのではないでしょうか。 精神障害のある人の地域包括ケアの課題 次に、精神障害のある人に地域包括ケアを広げていくことについての国の検討状況をご紹介します。 精神障害のある人の地域包括ケアを進めるため、厚生労働省の検討会が開かれています。 今年3月にまとめられた検討会報告書には以下のようなことが書かれています。 ☆市町村などの基礎自治体を基盤として進める必要がある。 ☆周囲の理解を得ながら安心して生活することができるよう、精神疾患や精神障害に関する普及促進をすることが必要。 ☆市町村で精神障害を有する方等や地域住民の身近な相談窓口として、地域精神保健の活動としての相談指導等の充実を図ることが重要。 ☆市町村における精神保健に関わる業務の制度上の位置づけを見直し、積極的に担える環境整備を行うべき。 ☆精神科医療機関はかかりつけ医機能、地域での役割、救急医療への参画、地域包括ケアシステムの拠点機能を果たすべき。 ☆住まいの確保はもとより生活全体を支援する「居住支援」の観点を持つことが必要。 ☆支援体制の構築に当事者の参画を求めていく。 ☆家族支援についても当事者の参画のもと、体制について話し合い、分かりやすい相談窓口を設置するなどの取り組みが必要。 医療から住まい、地域生活まで課題は多岐にわたりますが、医療体制については、 2024年度からの第8次医療計画に向けて検討するということです。 このような国の動きがある中で、練馬区の資料には、例えば ・専門部会を設置して地域包括ケアについて検討している ・当事者のもとに出向いて相談を受けられる精神保健福祉士を8名配置した ・地域の居場所等の情報集約・発信 などが掲げられています。 このような検討と実践のプロセスが区役所内部にとどまらず、より地域に開かれたものになるよう、今後議会で提案していきたいと考えています。 地域包括ケアの実現のために 私は精神障害のある人からのご相談を受けることも多いですが、生活保護や医療など必要最低限の支援にしかつながっておらず、 症状に不安を抱えながらも日常的に相談に乗ってくれる人がいない状況にある人も多いと感じます。 一人の当事者の地域生活と自分らしい人生を支えるためには、行政の相談員だけでなく、複数の支援者が関わることによって、 当事者の権利侵害が起きない体制づくりにもつながるのではないかと考えています。 【4ページ目】 11月28日 区政報告会をおこないました。 今回の区政報告会では、私が区議会で質問したテーマの中から一つに絞ってご報告・意見交換をしました。 本区政レポートでもご紹介しました、精神障害者の地域包括ケアについてです。   人が人を支援するとき、どんな立場の人であっても、たとえ良かれと思ってやったことであっても、 相手の権利侵害をしてしまうことは起こり得ると思います。どこに暮らすのか、どんな仕事をするのかといった選択を、 本人の意思に反して周りが決定してしまうことなどです。「権利侵害はいつでもどこでも起こり得るものである」という前提に立った上で、 権利侵害を防ぐためのしくみを作っていくことが必要です。そのため、障害のある人の地域生活を支えていくには、 限定した専門職が当事者との間の閉じられた空間で支援するのではなく、その人を取り巻く友人、家族、ご近所さんなどが 生活課題の不安を出し合い、支え合える体制が必要ではないかと私は考えています。 私からのこの問題提起に対し、参加されている方の中から、障害のある人を取り巻く関係者がみんなで集まり語り合う 「オープンダイアローグ」という取り組みがあるというご紹介がありました。こうした実践を練馬区の中でも広げていけないか、 私も考えていきたいと思います。    また、区政報告会には10月の衆議院選挙に当選された山岸一生さんが参加してくださり、当選してから 日に何度も練馬と国会を往復して活動していることや、国土交通委員会に所属したことなど近況をご報告いただきました。  特に力を入れたいテーマは何ですか?との参加者からの問いには、こども・子育て政策の充実、情報公開を進めること、 そして沖縄の問題に取り組みたいという思いを語っていただきました。 山岸さんとは、今後も定期的に連携する機会を作っていきたいと思います。 かとうぎ桜子プロフィール ●1980年生まれ。現在、41歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、 今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を専攻していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、 大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●社会福祉士取得後、NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、 介護保険など制度運用の改善と地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、 立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。今は定期検診のみで、落ち着いていますが、 この経験を機に、女性の健康や人権についてもっと取り組んでいきたいと考えました。 ●2014年、東日本大震災で被災した地域の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2017年、手話検定1級取得。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2019年、福祉と連携した旅行サービスとNPO等の支援活動をする「桜こみち株式会社」設立 ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。 ●ヘルパーの活動などでご高齢の方や障害のある方にお会いする機会も多いため、 コロナ禍になってしばらく駅頭でのレポート配布を休止していましたが、ワクチン接種が済み、2021年10月から再開しました。