かとうぎ桜子区政レポート 2021年11月号 議会報告通号140号 長期化するコロナ禍。この夏の第5波では、保健所、医療機関とも対応しきれないほどの感染拡大が起こりました。  先日、私はコロナ禍になってからの中野区の保健所の様子を追った「終わりの見えない闘い-新型コロナウイルス と保健所-」というドキュメンタリー映画を見ました。従来から感染症対策にあたってきた保健所の保健師だけでは 対応しきれず、区役所内のほかの部署で働く保健師も集まって、休みのないコロナ対応をしている姿が映し出され ていました。上の表にあるように、全国の保健所の数は1990年代後半から減らされてきています。 効率化を優先し、公的役割を削減してきたツケがこのような緊急時に噴出したといえます。 保健所業務に携わるメインの従事者である医師・保健師のような有資格者は、緊急時に急いで増やそうと思っても 限界があります。それは、コロナ対応のできる病床についても同様で、一朝一夕には改善できるものではありません。 今後、たとえ現在のコロナが終息したとしても、感染症の蔓延という課題はいつでもまた起こり得ますし、 今回の反省を生かし、長期的視点に立った専門職の養成と公的機関の充実を図る必要があると考えます。 また、練馬区ではこの第5波を乗り切るために保健師を人材派遣、非常勤(会計年度任用職員)という非正規で 雇用しました。最前線で働く専門職が不安定雇用であることも見過ごせない課題です。 前回の区政レポートで、区議会で「インクルーシブな練馬をめざす会」という5人の会派を作ったことを ご報告しました。「インクルーシブ」は「排除」の対義語で、日本語にするなら「包摂的」という意味です。 先の見通しの立ちづらい不安な社会だからこそ、多様性が尊重され、誰も排除されない社会の実現を目指し、 活動していきたいと考えています コロナ禍での社会的孤立をなくす工夫も必要 コロナ禍で介護サービスの 利用控えが起きた 練馬区はこの3月に「通所サービス調査報告書」をまとめました。介護の通所サービスを利用されている人のうち、 3519人分の2020年2月と5月の状況を比較するものです。  特に2020年の最初の緊急事態宣言時、コロナ感染対策のため、介護サービスの利用を控える人が増えました。 自宅で過ごす時間が増え、人に会う機会が減ることで、筋力や認知機能の低下などが懸念されます。 そこで、特に外出して人に会い体を動かす機会である通所サービスの利用控えがどのくらい起きているのか、 区が実態を把握するために調査が行われました。  このページの一番下にある表は、調査報告書から抜粋したものですが、2月と5月を比べると、 回数を減らすだけではなく、まったく利用をやめている人も多くいることがわかります。 こうした利用控えは要介護度が低いほど顕著であり、利用回数を減らした、亡くした人の数は要支援で 5割を超え、要介護1・2でも3割です。  最初の緊急事態宣言の時には社会全体でかなり活動が止められ、公共施設も休止されましたが、 感染対策のためとはいえ、あまりに活動を止めてしまうと孤立が起こってしまう懸念があります。 そこで、その後は図書館などの公共施設も極力開所されるようになりました。介護サービスの利用控えも 少なくなってきてはいますが、完全に解決したわけでもありません。 左ページの表は、区の介護保険の実績の資料から私がまとめたもので、2020年1月、5月、 2021年1月、5月を比較したものです。要介護認定を受ける人は微増傾向ですが、通所サービスの利用は 2020年1月の状況までには戻っていないことがわかります。区の報告書には、 ・持病があったり、マスクをするのが苦しいため通所サービスが利用できない ・コロナが収まったらまた行きたいと思っているけれど、収まらないままなので活動できなくなってしまった ・億劫で外に出たくなくなってしまった といった思いを持つ人もいることが書かれています。左表の数値からも、コロナをきっかけに外出できないままの 状態にある人が今もいらっしゃることが推測されます。  サービスを利用されていない人にはお手紙や訪問、電話などによる支援もありますが、完全な代替にはなりません。 コロナが長期化する中で、より工夫が必要と考えます。 表1 令和2年2月と5月の利用状況の変化 通所介護、要介護度別 練馬区通所サービス調査報告書2021年3月より 通所介護の利用頻度の変化を要介護度別にみると、利用頻度の減少計は、要支援で半数、要介護@・2で3割、 要介護3〜5で2割超と、要介護度が軽度になるほど利用頻度が減る傾向が見られた 全体1,443人 5月の利用頻度が増えた 3.2% 5月の利用頻度は変わらない 64.2% 5月の利用頻度が減った 15.7% サービス利用がなかった 15.2% 無回答 1.8% 利用頻度の減少計 30.8% 要支援173人 5月の利用頻度が増えた 2.3% 5月の利用頻度は変わらない 42.2% 5月の利用頻度が減った 16.2% サービス利用がなかった 34.7% 無回答 4.6% 利用頻度の減少計 50.9% 要介護1.2 819人 5月の利用頻度が増えた 3.2% 5月の利用頻度は変わらない 64.8% 5月の利用頻度が減った 16.4% サービス利用がなかった 14.2% 無回答 1.5% 利用頻度の減少計 30.5% 要介護3〜5 446人 5月の利用頻度が増えた 3.1% 5月の利用頻度は変わらない 71.7% 5月の利用頻度が減った 14.1% サービス利用がなかった 9.6% 無回答 1.3% 利用頻度の減少計 23.8% 表2 要介護認定者の数 2020年1月 要支援1 4481 要支援2 4220 要介護1 6499 要介護2 7129 要介護3 4699 要介護4 4176 要介護5 3488  合計  34692 2020年5月 要支援1 4501 要支援2 4175 要介護1 6394 要介護2 7166  要介護3 4809  要介護4 4283 要介護5 3481 合計  34809 2021年1月 要支援1 4581 要支援2 4285 要介護1 6568 要介護2 7363 要介護3 4999 要介護4 4357 要介護5 3416 合計  35569  2021年5月 要支援1 4669 要支援2 4315 要介護1 6673 要介護2 7396   要介護3 5064 要介護4 4424 要介護5 3414 合計  35955 通所サービスの利用状況 2020年1月 事業対象者 393 要支援1  1062 要支援2  1385 計 2840 要介護1 3124 要介護2 3667 要介護3 1947 要介護4 1005 要介護5 595 計 10338 合計 13178 2020年5月 事業対象者 227 要支援1   306 要支援2 870 計 1403 要介護1 2288 要介護2 2843 要介護3 1648 要介護4 889 要介護5 491 計 8159 合計 9562 2021年1月 事業対象者 340 要支援1 460 要支援2 1189 計 1989 要介護1 2694 要介護2 3287 要介護3 1772 要介護4 937 要介護5 516 計 9206 合計 11195 2021年5月 事業対象者 334 要支援1 461 要支援2 1241 計 2036 要介護1 2812 要介護2 3260 要介護3 1798 要介護4 957 要介護5 534 計 9361 合計 11397 この2つの図は、練馬区の介護保険実績報告からかとうぎ桜子がまとめたもの 大切な人を亡くしたときの支援体制の充実を 大切な人が亡くなったときに渡される 案内が簡素すぎた 大切な人を亡くした時、悲嘆する時間もなく葬儀や手続きなどに追われます。 なにから手を付けたら良いかわからない…多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。 そんなとき、手続きや心のケアについて適切な情報がわかりやすく得られたらいいのに…。  私がこの問題を議会でとりあげたのは、死産を経験した人のお話を聞いたことがきっかけのひとつでした。 妊娠12週以降の死産があったときには、役所での死産届・死亡届などの手続きも必要になりますが、 その時に役所の人がとても事務的で冷たく感じた、というお話でした。 初対面の役所の人がどんな対応をするのが適切なのか、難しい側面もありますが、 たとえ言葉かけは難しくとも、「大切な人を亡くしたばかりのあなたを心配している」 というメッセージを発信する必要はあるのではないかと感じました。 死産のお話もそうですが、急病や自殺、事故や事件に巻き込まれるなどの事情で 突然の死に直面する場合も、まずは誰に相談したら良いかさえわからない状態になります。 2017年に私が議会で取り上げたとき、下にある画像の一番左にあるような、 A4の1枚だけの一覧表が配られていました。これではあまりにも簡素で字が細かく、 見づらいし、相談窓口などの記載もありません。 その指摘をしたところ、次にA4の4枚分の案内に改善されて、真ん中の画像のように、 相談窓口の記載もされるようになりました。最初のものに比べたら見やすくもなりましたが、 わかりやすさや、ご遺族の悲嘆に十分な配慮が感じられるかというとまだ十分ではないでしょう。 他の自治体では、特に自殺対策の一環として、大切な人を亡くした人向けの見やすいカラーの冊子づくりを 早くから取り組んでいた自治体がありましたので、2020年の議会では、より分かりやすい冊子を作ることを求めました。 そして、2021年3月に、カラーで12ページ立て、ひとつひとつの項目が見やすい冊子ができました。 生きることが多様であるように、死に直面する状況も多様です。 それぞれの悲嘆に配慮した施策の充実を今後も求めていきたいと思います。