かとうぎ桜子区政レポート 2021年10月号 議会報告通号139号 【1ページ目】 「駅頭での区政レポート配布を再開いたします」 2006年に区議会議員を目指して以来、大泉学園、石神井公園、保谷駅で定期的に 区政レポートの配布をさせていただいてきました。いつも駅で区政レポートを 受け取ってくださる方とご挨拶を交わしたり、ご意見やご相談をいただくことで、 そのお声を区政に届けていきたいという思いを新たにさせていただき、 私にとって駅に立つことはとても大切な活動でした。 しかし、コロナが深刻化した2020年3月末から1年半ほどは休止をしておりました。 私は現在もヘルパーとして70代、80代の方のご自宅に訪問をしていること、 大泉学園町で運営しているシェアハウスにもご高齢の方や障害のある方が多いための休止でした。 私が日常的に関わっているご高齢の方や障害のある方、そして私自身のワクチン接種が 無事終了し、第5波の感染爆発も終息しつつあることから、この度駅頭を再開させて いただくこととしました。今後も感染状況によっては休止することもあるかと思いますが、 可能な限り継続していきたいと考えています。 コロナ禍においては、区政報告会もオンライン実施とするなどの工夫をしてきました。 また、長く議会では一人会派で活動してきたのですが、今年5月に、 思いを共有できる議員さんと5人で共同会派「インクルーシブな練馬をめざす会」 を作りました。こんな不安な社会の中でも、多様性を尊重し、一人ひとりが それぞれの特徴を大事にして認め合える社会の実現をめざして、 活動を進めていきたいと思います。どうぞ、引き続きの応援をよろしくお願いします。 【2〜3ページ目】 「コロナを理由に支援が切り下げられてはならない」 配食サービスの実質的な切り下げ 2021年度から、練馬区の高齢者向けの配食サービスが、委託から登録制度へと変更されました。 配食サービスは以前に私が実施した介護勉強会の中でも「試食しながら事業者のお話を聞く会」 をやったことがありますが、今までは、お弁当を手渡しすることで、見守りをする事業を、 区から配食事業者に委託していました。 1人週3食まで、練馬区が見守りにかかる委託費を支出していたので、 利用者は実質的に少し安い料金でお弁当を利用できました。 ところが今回、「見守りサービスを提供する事業者を登録する」にとどめる制度に変えることで、 実質的には支援を打ち切る形になりました。 私はかつて、「週3食では不十分なので、もっと回数を増やすなど制度の改善を」 と区に求めたのですが、このコロナ禍の財政難に乗じて、 実質的に支援が打ち切られる状況になってしまったのです。断じて容認できません。 ひとり暮らしの高齢者の中には、生活困窮していて生活費、特に食費を切り詰めている人もいます。 また、食生活を管理する習慣がなかったため食事選びに苦労されている人もいます。 私がご相談を受けている人の中には、家族との離別や死別により、 80代での慣れないひとり暮らしで食生活に悩む人も多くいらっしゃいます。 こうした人たちの中には、必ずしも高齢者に合わせた栄養バランスが考慮されていない安価なお惣菜で、 日々の食事を済ませる人もいらっしゃいます。 軽視される食のセーフティネット そうした人にとって、たとえ週3食という不十分な数であっても、安く利用できる配食サービスの存在は重要でした。 しかし、議会でその指摘をしたところ、担当者は「配食サービスは価格をきっかけに利用するものではない」 と答弁しました。何を根拠にそう言うのでしょうか。 この4月から始まった介護保険料の状況を見ると、生活保護を受給する人やそれに準ずる人は 約3万2千人いらっしゃいます。 それは65歳以上の人の約2割にあたります。低所得の人にとって食費の占める割合の大きさ、 そしてその金額の与える影響の大きさ、という課題を区は真剣に捉えるべきです。 また、介護が必要とまではいえないものの不調を抱える人、要支援状態といえるような状況にあっても 「自分は元気だから、介護、福祉は必要ない」と考える人もいらっしゃいます。 このような場合も、配食サービスの見守りを利用することがきっかけとなり、 福祉の利用そのもののハードルが下がるという役割を果たすこともあります。 2020年度の補正予算では、配食サービスが増額補正されていたのですが、これは、コロナ禍で 通所サービスなどの介護の利用を控えた人に代替の支援として活用されたことが推測されます。 配食サービスは、このような社会の緊急事態にも、介護保険サービスが支え切れなかった面を 補完する役割を果たしたといえるのです。 今回、実質的な支援の切り下げにより、今まで述べてきたようなセーフティネットとしての機能が損なわれることを懸念します。 地域で高齢の人や障害のある人が安心して暮らせる状況を目指す「地域包括ケア」の実現が求められる中で、 配食サービスの果たす役割や当事者にとってのニーズを検証し、高齢者が地域で安心して暮らすためのツールとして、 よりよい事業にするよう見直しをすることを区には強く求めました。 【表1】お弁当の金額の変化の一例 A社 2020年度まで480円  2021年度から 週3食まで642円、週4食以上750円 B社 2020年度まで450円 2021年度から 594円〜820円(透析食など特別食は820円) C社 2020年度まで440円 2021年度から756円 ※A社は週3食までの委託サービスを使っていた人のための 激変緩和措置を事業者努力で行っていると思われる。 【表2】65歳以上の現在の区民の人数と収入の段階による割合 (2021年2月練馬区の介護保険料に関する資料より抜粋) ・生活保護受給をしている人、 世帯が区民税非課税、本人の年金収入80万円以下 3万2301人、19.9% ・世帯が区民税非課税、本人の年金収入80万円超120万円以下 1万810人、6.7% ・世帯が区民税非課税、本人の年金収入等が120万円超 1万996人、6.8% ・本人:区民税非課税、年金収入額等 80万円以下 世帯:区民税課税 1万9184人、12.2% ・本人:区民税非課税、年金収入額等 80万円超 世帯:区民税課税 1万5939人、9.8% ・本人:区民税課税、合計所得金額 125万円未満 1万8981人、11.7% ・本人:区民税課税、合計所得金額 125万円以上210万円未満 2万1427人、13.2% ・本人:区民税課税、合計所得金額 210万円以上320万円未満 1万3388人、8.2% (中略) ・本人:区民税課税、合計所得金額 3,500万円以上5,000万円未満 364人、0.2% ・本人:区民税課税、合計所得金額 5,000万円以上 410人、0.3% 人数合計16万2494人 【4ページ目】 「外国人介護従事者」が安心してスキルアップできる環境づくり 「じょくそう」「ざいをほじ」って、漢字でイメージできますか? 「じょくそう」「ざいをほじ」という言葉を耳で聞いた時にみなさんは、 頭の中で漢字に変換したり、意味を理解したりできますか? これらは介護の現場で使う言葉で、漢字にすると「褥瘡」「座位を保持」です。 意味は、「床ずれ」「座った姿勢を保つこと」です。 介護の現場で使う言葉は、日本語を母語とする人にもあまりなじみがないものが多いです。 今、人手不足の中で「外国人介護従事者を増やそう」という動きがありますが、 スキルアップを図るために研修を受けたり、介護福祉士の資格を取るためにはこのような 分かりづらい言葉の中で頑張らなければならないのです。練馬区では推計で140名ほどの 外国人介護従事者がいらっしゃるとのこと。 介護従事者に求められるキャリアアップ 今、介護従事者の技術の向上が必要だと言われる中で、キャリアアップは次のようなしくみになっています。 ◆初任者研修で基本的知識を学び、 介護の現場に就職      ↓ ◆実務経験を重ねながら実務者研修受講      ↓ ◆介護福祉士を取得 このように従事者がキャリアアップをしていくことで、事業所も評価されるしくみです。 実務者研修の受講者は、現場でリーダー、サービス提供責任者など中核的な立場を求められます。 研修の中身としては、記録の書き方の研修がかなり大きな位置を占めます。 私は2019年度に介護職員実務者研修を受けて介護福祉士を取ったのですが、 私が通っていた学校にも外国出身の人が来られていました。 研修の内容は、介護のスキルアップというよりも文章力の講座のようで、 私はそもそもの研修システムのあり方にも疑問を感じたのが正直なところです。 キャリアアップに合理的配慮を 記録を書くことに研修のかなりの時間が割かれる中、冒頭に述べた「褥瘡」「座位を保持」 といった分かりづらい言葉の読み書きをしなければならず、外国出身の人はとても苦労されていました。 普段の仕事では翻訳アプリを使うなど工夫すればこなせるはずです。それなのに、 なぜ研修の場でわざわざ手書きの苦労を強いる必要があるのだろうかと疑問です。 研修を受講している介護職の大半は親切なので、外国出身の人が困っているのを見れば、 「一緒に勉強しよう」と声をかけます。それに対して外国出身の人が 「みんなに迷惑かけてばかりでごめんなさい」と言いながら研修を受ける姿に胸が痛みました。 制度的に合理的配慮がなされず、尊厳を傷つけられている現状は改善されるべきであると思います。  地域の中でも今できることとして、日本語を母語としない介護従事者向けに、 記録の取り方などに関する研修や、悩みごとを相談できる場を充実していくべきであると区議会で指摘しました。 【かとうぎ桜子プロフィール】 ●1980年生まれ。現在、41歳です。27歳から区議会議員になって、4期目です。 ●桐朋女子という、自由な校風の中学・高校を卒業しました。こどもの頃から猫が好きで、 今も3匹の保護猫を飼っています。キジトラ、サバトラ、黒猫。 ●慶応義塾大学文学部では国文学を勉強していましたが、人間関係を調整する仕事に関心を持ち、 大学4年の夏休みにホームヘルパー2級の資格を取得しました。 ●もっと深く福祉のことを知りたいと、大学卒業後に夜間の上智社会福祉専門学校に入学し、 昼間はヘルパーや福祉関係の事務の仕事をしながら、2005年に社会福祉士を取得。 ●NPOで介護の仕事をしたのですが、制度的な課題を感じ、介護保険など制度運用の改善と 地域で人の生活をささえるしくみを作りたいと、2007年の区議会議員選挙に初挑戦し、当選しました。 ●議員になってすぐ、区立保育園の民営化問題で当事者が置き去りとなって施策が進められていることに疑問を感じ、 立教大学大学院・21世紀社会デザイン研究科にて、民営化問題と市民参加について研究しました。 ●2012年、検診で子宮頸がんが見つかり治療。 ●2014年、東日本大震災の被災地の応援の活動で知り合った夫と結婚。 ●2018年、シェアハウスと地域の拠点「ウイズタイムハウス」を大泉学園町4丁目にオープン ●2019年、福祉と連携した旅行サービスとNPO等の支援活動をする「桜こみち株式会社」設立 ●2020年、介護福祉士を取得。 ●ヘルパーや相談員の仕事も続けています。現場の実践を政策に活かすとりくみを今後も続けていきます。